『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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賢者リノア

ゴウキへの誤解

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王都へ向かう途中トマスは、ゴウキ・ファミリーについて情報を集めた。


曰く、ゴウキは乱暴者。

元勇者パーティーメンバーだが、一人だけ浮いていた。

王都ではゴロツキと付き合いがあると噂がある。

王都で最も大きく、公正な冒険者ギルドである『セントラルギルド』の業務を妨害している。


ゴウキの悪評がいくらでも出てきて、それを知ったトマスは「そんな奴にリノアは騙されているのか」と嫌悪に顔を歪めた。
ゴウキは勇者パーティーにいたときからそこそこ知名度があったが、新聞屋の偏向報道などもあって悪いイメージが広まりつつあった。

ゴウキが活躍する王都ではそのイメージも払拭され始めているが、情報の回りが遅い田舎ではまだ古い情報のまま人々の間ではイメージが更新されないでいる。
トマスはたまたまその古い情報だけを拾い集めてしまい、ゴウキ・ファミリーに対して間違ったイメージを抱いてしまっていた。


「リノアはゴウキに騙されているんだ。そうじゃなきゃ、そんなゴウキとかいう極悪非道なやつについているはずがない」


トマスは悔しさに震え、そして一つの結論に至る。


「ゴウキがそんなとんでもない奴なら、僕にだって手段を選んでいる必要はない」


トマスは確かにゴウキについて誤解していたが、リノアに固執する彼はこの誤情報がなかったところで正常な判断をしていたかどうかは怪しい。


「これを使えば・・・フフッ」


トマスは自分が持っている道具袋の中身を見つめながら、怪しく微笑んだ。
彼が見つめているのは複数の魔道具である。

武勇で名を馳せるゴウキは強敵だ。そんなゴウキからリノアを取り戻すなど至難の業だろう。

だが、トマスには秘策があった。
女関係こそだらしなかったが、学校での勉強は真面目にやっていたのと、元より才能があったこともあって、トマスは独自に魔道具を開発できるまでに成長していたのだ。

そしてその魔道具を使うことにより、トマスはリノアを自分の元に取り戻そうと考えていたのである。


「待ってくれよリノア。すぐに迎えに行くから」


危ない思考に陥り、危険人物と化したトマスは、もうすぐ王都へ到着しようしていた。

今、一人の身勝手な男のために、リノアがやっと掴んだ平穏が乱されそうとしている。
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