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賢者リノア
リノアの願い
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最初に魔法を使えるようになってからは、リノアは凄まじい速度で魔法使いとしての成長を見せた。
いや、成長したというよりも、これまで既に備わっていた力が邪魔されることなく正常に使えるようになったといった方が正しいだろうか。
高度な白、黒魔法の両方を問題なく使用することが出来、その腕前は一流冒険者のそれと遜色ないどころか遥か凌駕するほどであった。
「凄いな。白と黒魔法を両方使える人は俺も見たことないわ」
ゴウキに感嘆されると、リノアはこそばゆい気持ちになる。
「そんな大したものじゃ・・・でも、白と黒魔法を両方使える人ってそんなにいないのは確かなんですけど・・・」
これまで自己肯定感が極めて弱かったリノアは、褒められてもすぐには素直に喜べなかった。
何かの間違いなのではないか?これは夢なのではないかと考えてしまう。
魔法を使えるようになっただけでもリノアにしてみれば大事であるというのに、まさか白黒両方の魔法を使えるようになるなどと思ってもみなかったからだ。
白と黒、両方の魔法を使える者は『賢者』と呼ばれる存在になる。
その存在は伝説級のレア物で、世間に知れればあっと言う間に国の機関に囲われて専属契約を結ばされてしまうような、それほどの大きな存在だ。
「このこと…内緒にしてもらえませんか?」
リノアはゴウキにそう懇願した。
気の弱いリノアは、自分の能力は過ぎたものだと思っている。今まで通り誰の目にも触れないように、そうひっそりとやっていきたいなどと思っていた。脚光を浴びるなどしたら緊張で死んでしまう・・・そう考えてすらいたのだ。
「内緒にするのはいいが、アンタはいいのか?」
「いいんです」
リノアは学校では「ようやく芽を出した白魔法士」として演じることにした。
黒魔法も使えるなどと本当のことを言ったら大事なるからだ。それよりも大事なのは・・・
「それよりも、ゴウキ先輩は学校を卒業したら冒険者になるんですよね?」
「え?あぁ・・・」
リノアの突然の質問にゴウキは面食らった。
暫定勇者パーティーメンバーとして名を馳せているゴウキは、例え予定通りに勇者パーティーにならずとも冒険者としての道を進むだろうことは誰もが知っている。
「でしたら、ゴウキ先輩がもし勇者パーティーに入らなかったり抜けたときは、私とパーティーを組んでください」
リノアは両手を強く握りしめながら、ゴウキの目を真っすぐに見て言った。
リノアにしてはかなり珍しい、他人へぶつける本気の願い事だった。
いや、成長したというよりも、これまで既に備わっていた力が邪魔されることなく正常に使えるようになったといった方が正しいだろうか。
高度な白、黒魔法の両方を問題なく使用することが出来、その腕前は一流冒険者のそれと遜色ないどころか遥か凌駕するほどであった。
「凄いな。白と黒魔法を両方使える人は俺も見たことないわ」
ゴウキに感嘆されると、リノアはこそばゆい気持ちになる。
「そんな大したものじゃ・・・でも、白と黒魔法を両方使える人ってそんなにいないのは確かなんですけど・・・」
これまで自己肯定感が極めて弱かったリノアは、褒められてもすぐには素直に喜べなかった。
何かの間違いなのではないか?これは夢なのではないかと考えてしまう。
魔法を使えるようになっただけでもリノアにしてみれば大事であるというのに、まさか白黒両方の魔法を使えるようになるなどと思ってもみなかったからだ。
白と黒、両方の魔法を使える者は『賢者』と呼ばれる存在になる。
その存在は伝説級のレア物で、世間に知れればあっと言う間に国の機関に囲われて専属契約を結ばされてしまうような、それほどの大きな存在だ。
「このこと…内緒にしてもらえませんか?」
リノアはゴウキにそう懇願した。
気の弱いリノアは、自分の能力は過ぎたものだと思っている。今まで通り誰の目にも触れないように、そうひっそりとやっていきたいなどと思っていた。脚光を浴びるなどしたら緊張で死んでしまう・・・そう考えてすらいたのだ。
「内緒にするのはいいが、アンタはいいのか?」
「いいんです」
リノアは学校では「ようやく芽を出した白魔法士」として演じることにした。
黒魔法も使えるなどと本当のことを言ったら大事なるからだ。それよりも大事なのは・・・
「それよりも、ゴウキ先輩は学校を卒業したら冒険者になるんですよね?」
「え?あぁ・・・」
リノアの突然の質問にゴウキは面食らった。
暫定勇者パーティーメンバーとして名を馳せているゴウキは、例え予定通りに勇者パーティーにならずとも冒険者としての道を進むだろうことは誰もが知っている。
「でしたら、ゴウキ先輩がもし勇者パーティーに入らなかったり抜けたときは、私とパーティーを組んでください」
リノアは両手を強く握りしめながら、ゴウキの目を真っすぐに見て言った。
リノアにしてはかなり珍しい、他人へぶつける本気の願い事だった。
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