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賢者リノア

賢者 開花のとき

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ゴウキが魔力を「色」で識別したことは、当初リノアにとっては驚愕の出来事だった。本当にそう見えるのだろうか?と少しだけ懐疑的になったのも否めない。
しかし黒魔法を学び、魔法について新たな解釈を得たうえでゴウキの話に耳を傾けると「なるほどな」と思った。
これまで漠然と「魔力は魔力。それ以外の何物でもない」程度に考えていたリノアだったが、魔力はその持つ人間によって大きさも色も違いがあることに気が付いたのである。

そして同時に理解した。
自分には明らかに他人と違う魔力が溢れている・・・と。

ゴウキがリノアの魔力が他人と違うことを察知したのは、あくまで野性的な勘だった。ゴウキは魔法を知らないので「なんとなくそう見えるぞ」程度にリノアに指摘したに過ぎないのだ。

だが、リノアはついにはっきりと自分の魔力について理解する。
興味は持ちつつも白魔法士となる道から遠ざかると思い、ずっと避けていた黒魔法の勉強による副産物だった。
並の魔法使いから確かに自身に適していない属性の魔法を勉強することは無駄ごとである。1ミリも役に立つことはないと言っていい。

しかし、実のところリノアにとっては白魔法と黒魔法の両方の勉強は絶対に必要なことだったのである。
白と黒、両方の属性の魔力を持つリノアは、片方ではなく両方の魔を同時に伸ばす必要があったのだ。


そしてついに、リノアのこれまでの努力が実る時が来た。



「で、できた・・・できました!」


いつもの場所でゴウキと二人・・・リノアの魔法を実践した日、ついにリノアは白魔法の基本中の基本である回復術を使うことに成功した。
これまで白魔法のみで黒魔法を全く鍛錬してこなかったリノアの魔力は、長い時をかけて歪な形を形成してしまっており、黒魔法の魔力が白魔法の魔力を栓してしまう形になっていたのだ。黒魔法を学び、歪に変形した魔力の流れが正常になることで、これまで使われることのなかった膨大な魔力が開通し、ついに魔法が具現化するようになったのである。


「黒魔法の方はどうなんだ?」


ゴウキに問われ、ハッと我に返ったリノアは黒魔法の方も実戦してみた。
ファイアボールという手のひらサイズの火球を飛ばす初歩的な黒魔術を地面に向けて使ってみたところ、大きさこそ手のひらサイズではあるが、極めて高度に圧縮された高威力の火球が地面をドロドロになるまで焼き払ったのである。


「凄いな・・・そこまで高威力な魔法、俺もそうそう見たことない・・・ぞ」


ゴウキは感嘆の声を上げるが、それを言い終えるまでにゴウキはリノアに強く抱き着かれていた。


「やった!やった!やりました!!」


ゴウキに抱き着きながら涙を流して歓喜の声を上げるリノア。
ゴウキは最初こそ戸惑っていたが「おぅ、良かったな」と優しい目を向けながらリノアのされるがままになり、そっと頭を撫でた。
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