『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

忍者スミレ

滞在の条件

「は・・・・？」


場所は変わりバルジ王国のゴウキ・ファミリーの拠点。
そこで自室で療養中のスミレは、はるばる故郷から速達で送られてきた手紙に目を通して唖然とした。


「は？は？え？マジ・・・？」


何度も何度も読み返すが、当然ながら内容が変わることはない。

手紙はスミレの父にしてモチヅキ家の当主であるシンゾウからのものであった。
そこにはスミレとサスケの婚約が破棄されたこと、そしてすぐには故郷に戻ってくる必要がないこと、十勇士を殺したことは正当防衛であり、それについては処罰するつもりはないということ。だが、何より大事なことに・・・


「ご、ゴウキとの子を作れ・・・って・・・？」


スミレが唖然としたのはこれだった。
シンゾウはただちにスミレにモチヅキ家に帰れとは言わない代わりに、ゴウキと子を成してその子をモチヅキの跡取りとしたいと考えている旨が書かれていたのだった。

なんでもサスケや十勇士を打ち負かしたという優秀な戦士たるゴウキの血が混じれば、モチヅキ家も安泰であるというシンゾウの考え方からだった。
ゴウキが東方まで婿に来てくれるならそれに越したことは無いのだが、そこまでは望まないと。
子を成してくれるなら、スミレがバルジ王国に滞在することを許そうといった内容だった。


「ふ、普通自分の娘にそんなこと言うかぁっ！？」


顔を真っ赤にして呆れるスミレだが、それでも動悸が止まらなかった。
サスケを退けたこと、十勇士を殺したことに対する処罰が無かったことは幸いだ。最悪連れ戻されるまでは考えていたのだから、そこだけは本当に助かったとスミレは考えていた。

しかしバルジ王国に残るには、ゴウキの傍にいるためには彼と子を成せという。
シンゾウの提示した条件は時限付きではないが、だからといっていつまでも音沙汰無しでは再び連れ戻されるリスクが出て来るだろう。


「ぐぬぬ・・・」


手紙をじっと睨みながら、スミレは唸る。
スミレにとって不本意なことが書かれていたわけではなかった。サスケから助け出されて以来、スミレはゴウキに対してもはやどうにも抑えられないほどの気持ちを抱いていたのだ。


「そうだ・・・そうだよ」


いつかは・・・そう考えていた時が来た、ただ背中を押されただけだ。それだけだとスミレは思った。