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忍者スミレ

死刑宣告

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サスケの言葉に、その場が全員が黙り、シンと静まり返った。
そしておろむろに当主であるシンゾウへ視線が注がれる。

サスケの言葉にどのように返すのか、誰もがシンゾウの対応を見守っていた。
シンゾウはサスケの言葉にすぐには返事をせず、顎に手を当て、しばらく考え込む仕草を見せて熟考している。

これに痺れを切らしたサスケが更に畳みかけた。


「ここでひいてはモチヅキ家が舐められてしまう!スミレは帰ってこない、十勇士の仇は取れない、我ら忍者の沽券に関わる話だっ!!当主、ご決断をっ!!」


半狂乱とも言えるほどの圧を持って、サスケはシンゾウに食ってかかる勢いで言った。
かつてサスケはこうまで取り乱したりするような男ではないと周囲に印象付けさせていただけに、このあまりの変貌ぶりに見ている者は衝撃を受けながらも固唾を飲んで成り行きを見守っていた。


サスケの言葉に動じることはなく、あくまでマイペースを崩さずにシンゾウは熟考を続けていたが、やがてようやく重かった口を開いた。


「モチヅキ家の品位を貶めるようなことをしでかしたのは、サスケ・・・お前だろう?」


シンゾウの言葉に、サスケが目を見開く。周囲にいた者達の反応も同じだった。
シンゾウがこれまでサスケに対してこうまで否定的な言葉を言うことが無かったからだ。
と、言うよりサスケの言う事なすことについて、否定も肯定も見せたことはなかった。サスケを含めた誰もがそれを、次期当主に対しての「黙認」と捉えていた。

しかし、このときシンゾウは明確にサスケを批判したために、皆に大きな衝撃が走っていた。


「十勇士を引きつれておきながら、スミレを連れ帰るどころか、連れて行った十勇士は壊滅。お前は一体何をしにいったんだ?モチヅキ家の恥を晒しに行っただけか?」


シンゾウの言葉はサスケに鋭利な刃物となって刺さる。
彼が口にしなくても、誰もが内心は思っていたことだった。それを人前ではっきりと口にし、批判されてはサスケの立つ瀬はない。
モチヅキ家において存在感を放っていたはずのサスケは、今この瞬間に凋落したのだ。


「お前にモチヅキの家の任せることはできんな。家を滅ぼされてしまうのがオチだ」


シンゾウからの死刑宣告に、サスケは頭の中が真っ白になった。
モチヅキ家の当主になり、忍者という優秀な傭兵を世界に売り込み、忍者界の頂点に立って見せるというサスケの野望が潰えた瞬間だった。
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