『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

忍者スミレ

モチヅキ十勇士

スミレことモチヅキ・スミレはバルジ王国から遥か東方にある国の忍者の家系の出身である。

世界屈指の冒険者王国といえるバルジの学校に留学し、経験と知識を積みつつ、人脈、そして機あらば国の機密を持ち帰る・・・そういった使命をスミレは帯びていた。

しかしゴウキとの出会いによって、忍者として、一族としての宿命に疑問を持ち、スミレは国に帰らずバルジ王国での独り立ちを決意する。
留学にかかった費用は色をつけて故郷に送り返し、金に関して言えばとりあえず義理は果たした。


だが、実家のモチヅキ家はそれで納得したかというとそうではない。






王都のとある宿屋の一室に、複数の男が集まっていた。
全員が黒髪に黒い眼・・・スミレと同じ東方の国の出身者であり、スミレの実家のモチヅキ家の親戚達である。
『モチヅキ十勇士』と呼ばれる、忍者のエリート集団であった。


「いやはや、まさかモチヅキ家始まって以来の天才と言われたスミレ嬢が、まさかあそこまで堕落するなんてな」


十勇士の一人、6０ほどの男が溜め息交じりに首を傾げながら言った。


「小手先の技術はまぁそこまでは腐ってはいないように見えた。・・・が、それ以外は話にならんね」


別の40歳ほどの男が言う。


「現状では煮ても焼いても使えないな。子を成させるにしても、まずはしっかりと矯正したからだと思うぞ。じゃないと、ろくな子が生まれないだろうな」


十勇士はよってたかってスミレを酷評する。
王都では右に出るものはいないだろう斥候職を極めたスミレだが、十勇士からすると到底眼鏡に適うほどのものではないという。


人通り十勇士が話終えた中で、彼らの視線が十勇士の他にいた一人の若い男に注がれた。


「それで、サスケの考えとしてはどうだね？あんな体たらくだが、それでも気持ちは変わらんかね？」


十勇士の一人の質問に対し、サスケと呼ばれた若い男は答えた。


「もちろん。スミレは私が責任を持って教育し直し、立派な後継ぎを生ませてみせましょう」



彼の名はサスケ。
かつてモチヅキ家の取り決めで、スミレと婚約をしていた男であった。