『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

スミレに迫るもの

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クレア達が勅命により王都を発ち、西の国境を目指して出発したことを情報網で知ったスミレは、安堵の溜め息を漏らした。
状況的にはクレアがどれだけ望んだところでゴウキに会うことは難しいのだが、彼女の執念の深さと異常性を知っている身としては、唐突にどんなウルトラCを駆使してやってくるかわからないと警戒はしていたのだ。

ゴウキは最近は団の顔役としての自覚が芽生えてきたのか、舎弟たちの面倒をたまに見るようになった。
最初は渋々といった感じだったが、元々が面倒見の良い性格なのもあってか、今では割と舎弟たちとも良く接して馴染んでいる。

ゴウキの中で舎弟たちが「成り行きで面倒を管理することになった連中」から「手のかかる仲間?」くらいにはいくらか格上げになったかなとスミレは感じていた。

これはスミレの計画通りである。ゴウキ・ファミリーの存在の価値がゴウキの中でクレアのそれを越えれば、もう彼がスミレ達の元から去ることはない。
クレアが今回の遠征に行っている間に、ゴウキ・ファミリーの価値をゴウキの中で増幅させれば、より安泰になるだろう。

クレアとの戦いでは不覚を取ったし、今思い出してもスミレの腸が煮えくり返りそうだが、次にクレアが来るときまでに戦術を練ってさえおけば良い・・・
一先ずは当面の危機は去った・・・スミレはそう考えていた。







そんなスミレを、彼女が気付かないほどの遠方から眺める複数の影があった。


「はぁ、見ていられんなぁ・・・」



影のうちの一人がぼやく。
心底呆れたような溜め息をついていた。


「呑気なアホ面をしとる。こうして見られていることにも気づいておらん。嘆かわしい」


忍者として通常の冒険者とは規格外の能力を持ち、不可能なことなどあるのだろうか?と思われがちなスミレに対し、この影達は完全に気配を悟られることなく監視することが出来ていた。


「今の今まで全く気付いている様子が無かったからのぅ。だからあの暴走するだけの猪女に不覚を取るのだ」


「前のあやつならもう少しマシだったのではないか?」


「それは言えている。こんなぬるま湯に浸かっているから、すっかり腑抜けてしまったのだろう」



影達はここ最近、ずっとスミレを監視していた。
極々一部だけスミレは何か気配を感じ取ったときもあるが、それでもほとんど気付かれることなく今に至る。



「もはや考えるまでもないなぁ。様子を見ていたが、これ以上は必要ないだろう」


「あぁ、もう見ていられん。早急に連れ戻すべきだ」


「時間の無駄だな。もう終わりにしよう」


影達は口々にそう言うと、影達の中のリーダー格と思わしき者が口を開いた。


「では決まりですね。スミレは連れ帰るということで」


一難去ってまた一難。
スミレに対し、大きな脅威が迫ろうとしていた。
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