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ゴウキ・ファミリー
ミリアの戸惑い
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クレアが自宅で謹慎している間、勇者パーティーのメンバーは特にやることがなかった。
クレア乱闘事件の際にはスミレの毒によって意識を失いこそしたが、半刻ほどで回復し、特に後遺症が残ることもなく動けるようになった。
クレアの罰則がないのだから、当然パーティーメンバーもお咎めはない。今はリーダーであるクレアの謹慎が解かれるのを待つばかりである。
そんなわけで、リフトとミリアは特にやることないが、昼はパーティーの拠点へと顔を出すことにしていた。
待っている間に国王からの通達が来たりする可能性があるからである。
ちなみにマリスは「クレアさんが戻ってきたら教えてください」と言ったきり一度も来てはいない。
心ここに在らずの彼女が来たところで妙な空気になるだけなので、それについてはリフトも何も言わなかった。
「しかし、クレアは一体どうしたというのだろう」
先日のクレアのことを思い出し、リフトはふと疑問を口にした。
リフトはあまりの出来事に混乱が続き、こうして時間を持て余すようになって初めて冷静に当時のことを思い起こしていた。
「全く冷静じゃなかったよ。いつものクレアらしくない。あれじゃあまるで・・・」
猛獣に近い。
それを口にしようとして、リフトは首を横に振る。それはいくらなんでも言い過ぎだと思ったからだが、しかしそれを聞いていたミリアも同じようなことを考えていた。
「あんなクレア・・・初めて見た・・・」
リフトは当時のことを思い出したのか、ぶるっと身震いをさせた。
クレアとは一緒にパーティーを組んで何度も死線をくぐってきた仲であるが、そんなリフトでもこれまで見たことのないほど狂暴で、正しく刺すような殺気を振りまいていた姿は猛獣・・・いや、ゴウキに似ているとさえ考えてしまう。
いや、ゴウキはあれでなかなかに冷静だから、完全に冷静さを失っていた分、彼よりも恐ろしいかもしれないとリフトは思った。
「まぁ、クレアは今でこそそうじゃないけど、昔は思い込みが強くて暴走したときもあったから・・・」
ミリアの脳裏にかつてのクレアの姿が思い浮かんだ。
自分の友達が傷つけられたと訴え、ゴウキの話も聞かずに力による報復を仕掛けてきた初顔合わせのときのことだ。
「昔・・・そんなことがあったのかい?どれだけ前の話なんだ?」
リフトが不思議そうな顔をしてミリアに問う。
「えっ・・・」
ミリアは一瞬、思考が停止した。
(あ、まずい・・・)
ゴウキとクレアが初顔合わせをしたのはまだ皆が子供の頃、第4区であった出来事だ。
世間的にミリアは第4区には住んだことがないことになっているし、リフトもそう思っているから、ミリアがその現場にいたなどということは知られてはいけないのだ。
「えっと・・・ゴウキ、そう、ゴウキがそんなことを言っていたときがあって・・・」
「あぁ・・・そういうことか。流石にそれはゴウキが適当なことを言ったんじゃないのかい」
「そう・・・そうかもしれないわね」
ミリアは慌ててゴウキから聞いたことにしたが、特にリフトは疑う様子はなく、この話はどうにか流すことが出来た。
(・・・危なかった)
ミリアはかつて第4区に住んでいたときのことを人生の汚点だとすら思っている。と、いうかそう思うように精神操作魔法でコントロールされている。
だから、当時のことは極力考えないようにしていたし、実際に思い出すことなどほとんどなかった。忌々しい記憶だと考えているからだ。
だが、いま自然とかつてのゴウキとクレアのことが記憶から蘇ったことにミリアは戸惑いを感じていた。
この日以来、ゴウキのことだけでなく、第4区での出来事もクレアはよく思い出すようになる。
クレアの暴走という強烈な出来事が脳を刺激したせいか、精神操作魔法の限界が訪れようしていたのだ。
クレア乱闘事件の際にはスミレの毒によって意識を失いこそしたが、半刻ほどで回復し、特に後遺症が残ることもなく動けるようになった。
クレアの罰則がないのだから、当然パーティーメンバーもお咎めはない。今はリーダーであるクレアの謹慎が解かれるのを待つばかりである。
そんなわけで、リフトとミリアは特にやることないが、昼はパーティーの拠点へと顔を出すことにしていた。
待っている間に国王からの通達が来たりする可能性があるからである。
ちなみにマリスは「クレアさんが戻ってきたら教えてください」と言ったきり一度も来てはいない。
心ここに在らずの彼女が来たところで妙な空気になるだけなので、それについてはリフトも何も言わなかった。
「しかし、クレアは一体どうしたというのだろう」
先日のクレアのことを思い出し、リフトはふと疑問を口にした。
リフトはあまりの出来事に混乱が続き、こうして時間を持て余すようになって初めて冷静に当時のことを思い起こしていた。
「全く冷静じゃなかったよ。いつものクレアらしくない。あれじゃあまるで・・・」
猛獣に近い。
それを口にしようとして、リフトは首を横に振る。それはいくらなんでも言い過ぎだと思ったからだが、しかしそれを聞いていたミリアも同じようなことを考えていた。
「あんなクレア・・・初めて見た・・・」
リフトは当時のことを思い出したのか、ぶるっと身震いをさせた。
クレアとは一緒にパーティーを組んで何度も死線をくぐってきた仲であるが、そんなリフトでもこれまで見たことのないほど狂暴で、正しく刺すような殺気を振りまいていた姿は猛獣・・・いや、ゴウキに似ているとさえ考えてしまう。
いや、ゴウキはあれでなかなかに冷静だから、完全に冷静さを失っていた分、彼よりも恐ろしいかもしれないとリフトは思った。
「まぁ、クレアは今でこそそうじゃないけど、昔は思い込みが強くて暴走したときもあったから・・・」
ミリアの脳裏にかつてのクレアの姿が思い浮かんだ。
自分の友達が傷つけられたと訴え、ゴウキの話も聞かずに力による報復を仕掛けてきた初顔合わせのときのことだ。
「昔・・・そんなことがあったのかい?どれだけ前の話なんだ?」
リフトが不思議そうな顔をしてミリアに問う。
「えっ・・・」
ミリアは一瞬、思考が停止した。
(あ、まずい・・・)
ゴウキとクレアが初顔合わせをしたのはまだ皆が子供の頃、第4区であった出来事だ。
世間的にミリアは第4区には住んだことがないことになっているし、リフトもそう思っているから、ミリアがその現場にいたなどということは知られてはいけないのだ。
「えっと・・・ゴウキ、そう、ゴウキがそんなことを言っていたときがあって・・・」
「あぁ・・・そういうことか。流石にそれはゴウキが適当なことを言ったんじゃないのかい」
「そう・・・そうかもしれないわね」
ミリアは慌ててゴウキから聞いたことにしたが、特にリフトは疑う様子はなく、この話はどうにか流すことが出来た。
(・・・危なかった)
ミリアはかつて第4区に住んでいたときのことを人生の汚点だとすら思っている。と、いうかそう思うように精神操作魔法でコントロールされている。
だから、当時のことは極力考えないようにしていたし、実際に思い出すことなどほとんどなかった。忌々しい記憶だと考えているからだ。
だが、いま自然とかつてのゴウキとクレアのことが記憶から蘇ったことにミリアは戸惑いを感じていた。
この日以来、ゴウキのことだけでなく、第4区での出来事もクレアはよく思い出すようになる。
クレアの暴走という強烈な出来事が脳を刺激したせいか、精神操作魔法の限界が訪れようしていたのだ。
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