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ゴウキ・ファミリー

暴力

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幼い頃からクレアは我慢を強いられてきた。
自分のしたいこと、欲しいもの、ある程度は叶えて貰ったが、それでもアードニア家の者としての風格を乱さない程度の範囲に留められた。

「人として模範であるようにしなさい」

「常に完璧であれ」

「我欲を持つな」


それを常々意識するように言われてクレアは育った。
それは彼女が勇者として国王に認定されてからはなお厳しく言われるようになる。


クレアは親を尊敬していた。そして自分はそんな親の言いつけをしっかり守れていると自負していた。
それは相当なプレッシャーのかかっていることだったが、それでもクレアは自分はそうあるべき立場にあり、くじけるわけにはいかないと常に気を張っていた。


そんなクレアにとって、ゴウキという存在は特別だった。
幼い頃のこととはいえ、自分のことを完膚なきまでに敗北に追い込んだ唯一の存在・・・自分が気を張らないで済む相手であった。

人に頼られ、完璧を求められる重圧を常にかけられているクレアにとって、ゴウキは唯一自分が縋ることを許されている・・・そう思う相手だったのだ。
友人だったのか、依存する相手だったのか、懸想する相手だったのか、あるいはその全てだったのか・・・
とにかくクレアにとってゴウキは特別な存在だった。


だが、クレアは自らの立場上、それを表に出すことは出来なかった。
彼がパーティーにいたときだって、本当はゴウキの意見を採用したくても、それが出来ないことが多々あった。

『勇者』であること。
人としての模範であること。

それらを強要されていたクレアは、常に人に平等であろうとふるまい、結局のところゴウキの度量に甘えて彼に負荷をかけてしまっていた。そのことについてずっと悔やみ、苦しみ、嘆いていたクレア。
立場が邪魔をして、素直にゴウキに接することが出来ないクレアはずっと柵に囚われ苦悩していた。



(私がこうなのに、この人はなんだろう)


素直にゴウキに対する気持ちをぶつけ、あろうことか恋人にまでなったという(自称)リノア。
ゴウキにとっての外敵として認識し、自分に攻撃してくるスミレ。

自分が思うままにゴウキに接することができている彼女達のことを、羨ましいと思うと同時に憎しみが湧いていた。

これまでクレアは自分を律してきた。
どんなことがあっても、あくまである程度のところで感情を制御してきた。
心を押さえつけてきた鎖が、リノアを前にして一気に砕け散った。


「コロしてやる」


そう思った瞬間、クレアの心は溢れかえるほどの暴力への渇望に飲み込まれた。
一方的な八つ当たり?それがどうした?と、クレアを制御するべき理性は仕事をしていない。
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