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ゴウキ・ファミリー
女の戦い その5
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「何があった!?」
「ケンカだ、ケンカ!」
「派手にやってるらしいぜ!」
王都の中でも比較的人通りの少ない場所であったが、街中で爆発が起こり、抜刀まであれば流石に騒ぎになった。冒険者で溢れる王都では往来の喧嘩など別に珍しいことではないが、時に闘技場でも見られないような生々しく激しい勝負が見られることもあり、闘技場の鑑賞が好きな者にとってはこうした喧嘩事は刺激的な娯楽だった。
(まずい・・・!)
スミレの張った糸によって動けないでいるリフトは、続々とギャラリーが増えてきているのを見て青ざめた。
往来で真剣を抜いて喧嘩をしたなどと、勇者パーティーとしての評判が傷物・・・どころか、大下落しそうな予感がしたからだ。
「クレア!今すぐ剣を納めるんだ!」
そんなリフトの必死の声は、残念ながらクレアの耳には入っていなかった。
クレアは完全に目の前のリノアに向けて意識を集中させており、無視をしているのではなく、本当にリフトの叫びを認識していなかったのだ。
「ッ!!」
リフトの制止空しく、クレアは大地を蹴ってリノアに向かって突進した。
だがそのすぐ目の前には、目には見えないものの、縦横無尽に張り巡らされたスミレの強力な糸の防壁が存在していた。
肉に食い込むほど細く、それでいて人力では破壊出来ぬほど強い。
そんな糸を張った場所に知らずに突撃すれば、突進力も手伝ってクレアの体がバラバラになるという惨事になりかねない危険な罠だったが・・・
「ふっ!!」
何とクレアは直前で剣を振り、その糸を全て断ち切った。
クレアにはスミレの手の内がわかっていたわけではない。僅かに糸が光を反射したことで、直感的に罠が張ってあることに気が付いてのことだった。
「へぇ」
スミレが感嘆の声を上げる。
せめてそれくらいの芸当が出来なくてはゴウキの元パーティーメンバーは務まらないよなぁと、僅かに口角を上げる。
「真剣を振った!それじゃあこれで正当防衛成立ですよねぇ!?」
先に爆裂系の罠魔法を仕掛けておいて、図々しくもリノアはそう言いながら電撃の魔法を放つ。
クレアはギリギリのタイミングでそれを躱すが、そうして失速した隙にリノアは身体強化の魔法による超跳躍で後方へ距離を取っていた。
「ふんっ」
クレアがそれを追う。
「・・・っ!」
クレアが切った糸はリフト達を拘束していたそれを繋がっており、リフト達の拘束がここでようやく解けた。
「クレアっ!」
体が動けるようになったことを理解したリフトは、暴走するクレアを止めようとする。
「あ、あれっ・・・」
急な眩暈をリフトは感じた。がくっと体がバランスを崩し、膝を地面についてしまう。
「これは・・・毒・・・!」
回復術が使えるミリアは、状態異常について詳しい。そんな彼女だからこそ、一瞬にして自分達に起きたことを察することができた。
「ご明察。ま、わかったからといってどうにかなるもんでもねーけどさ」
スミレがそう言ってミリアに対して意地悪く笑う。
糸を巡らせると同時に、霧状にしてリフト達周辺にまき散らしておいた即効性の毒による仕業であった。
「ケンカだ、ケンカ!」
「派手にやってるらしいぜ!」
王都の中でも比較的人通りの少ない場所であったが、街中で爆発が起こり、抜刀まであれば流石に騒ぎになった。冒険者で溢れる王都では往来の喧嘩など別に珍しいことではないが、時に闘技場でも見られないような生々しく激しい勝負が見られることもあり、闘技場の鑑賞が好きな者にとってはこうした喧嘩事は刺激的な娯楽だった。
(まずい・・・!)
スミレの張った糸によって動けないでいるリフトは、続々とギャラリーが増えてきているのを見て青ざめた。
往来で真剣を抜いて喧嘩をしたなどと、勇者パーティーとしての評判が傷物・・・どころか、大下落しそうな予感がしたからだ。
「クレア!今すぐ剣を納めるんだ!」
そんなリフトの必死の声は、残念ながらクレアの耳には入っていなかった。
クレアは完全に目の前のリノアに向けて意識を集中させており、無視をしているのではなく、本当にリフトの叫びを認識していなかったのだ。
「ッ!!」
リフトの制止空しく、クレアは大地を蹴ってリノアに向かって突進した。
だがそのすぐ目の前には、目には見えないものの、縦横無尽に張り巡らされたスミレの強力な糸の防壁が存在していた。
肉に食い込むほど細く、それでいて人力では破壊出来ぬほど強い。
そんな糸を張った場所に知らずに突撃すれば、突進力も手伝ってクレアの体がバラバラになるという惨事になりかねない危険な罠だったが・・・
「ふっ!!」
何とクレアは直前で剣を振り、その糸を全て断ち切った。
クレアにはスミレの手の内がわかっていたわけではない。僅かに糸が光を反射したことで、直感的に罠が張ってあることに気が付いてのことだった。
「へぇ」
スミレが感嘆の声を上げる。
せめてそれくらいの芸当が出来なくてはゴウキの元パーティーメンバーは務まらないよなぁと、僅かに口角を上げる。
「真剣を振った!それじゃあこれで正当防衛成立ですよねぇ!?」
先に爆裂系の罠魔法を仕掛けておいて、図々しくもリノアはそう言いながら電撃の魔法を放つ。
クレアはギリギリのタイミングでそれを躱すが、そうして失速した隙にリノアは身体強化の魔法による超跳躍で後方へ距離を取っていた。
「ふんっ」
クレアがそれを追う。
「・・・っ!」
クレアが切った糸はリフト達を拘束していたそれを繋がっており、リフト達の拘束がここでようやく解けた。
「クレアっ!」
体が動けるようになったことを理解したリフトは、暴走するクレアを止めようとする。
「あ、あれっ・・・」
急な眩暈をリフトは感じた。がくっと体がバランスを崩し、膝を地面についてしまう。
「これは・・・毒・・・!」
回復術が使えるミリアは、状態異常について詳しい。そんな彼女だからこそ、一瞬にして自分達に起きたことを察することができた。
「ご明察。ま、わかったからといってどうにかなるもんでもねーけどさ」
スミレがそう言ってミリアに対して意地悪く笑う。
糸を巡らせると同時に、霧状にしてリフト達周辺にまき散らしておいた即効性の毒による仕業であった。
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