『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

お引き取り願う(強制)

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「あら、動き出すみたいですね・・・」


クレア達がゴウキに会うために拠点を出発しようとする少し前・・・予め勇者パーティーの拠点に潜ませておいた、情報収集のために使われる魔法で作られたリノアの『コウモリ』は、クレア達が開いていた会議の内容をしっかりと盗み聞いていた。
リノアはカフェで飲んでいたミルクティーの入っていた容器の近くに代金を置いておくと、立ち上がって一人歩き出す。


「ゴウキ先輩はこれから成り上がるための大事な時期なんです。邪魔はさせませんよ」


ある決心をしてリノアは歩いていたが、ややもしないうちに見知った顔と鉢合わせすることになる。


「・・・よっ。奇遇じゃん」


それはリノアと同じ方向に向かっていたと思われるスミレだった。
軽く挨拶をされたが、リノアはスミレから何となく物々しい雰囲気を感じる。
リノアは直感で理解した。スミレも自分と同じ用事があるのだと。


「ご機嫌ようスミレ先輩。今日はお散歩ですか?」


「ちょっと野暮用でさ」


二人とも用件は明かさないが、歩いて向かう方法は一緒だ。


『カァ!』


突然、一羽のカラスがスミレの肩に止まって鳴いた。
スミレは「あぁ、そう」とだけ話し、どこからか取り出したパンの欠片をカラスに食べさせると、カラスはバッと羽ばたいて空へ消えていく。


(ん?ちょっと進路を変えたみたい)


リノアはリノアでクレア達に付かせているコウモリにより、常に彼女らの動向は把握していた。
クレアが進路を変えたので、リノアもそれに合わせて進路を変更しようとすると、スミレも同じようにそれについてくる。


「あぁ、スミレ先輩も同じご用事ですか?」


「あー?ぐーぜんだよぐーぜん」


リノアもスミレも用件は同じだ。わかっていて茶化している。
リノアはコウモリで、スミレは諜報役のカラスでクレア達の動向をチェックしていた。彼女達の目的は一つ。クレア達をゴウキに接触させないこと。
まだゴウキはクレア達への未練を捨てきれていないと彼女達は勘づいていた。今は誤解をしているようだが、クレアとゴウキが接触すればなんらかのきっかけで和解しかねない。
クレアは自分の考えに固執する馬鹿だが、ゴウキはそうではない。きちんと相手の話を聞く余裕のある男だからだ。
よって何が何でも、今はまだクレアとゴウキを接触させるわけにはいかない。だから二人はどれぞれにクレア達のことを監視していた。

だから今回はクレア達にお引き取り願わねばならない。
必要なら武力行使も辞さない・・・ていうか、挑発してでも行使する気満々だった。
だが、二人は決して示し合わせていたわけではない。スミレはスミレ、リノアはリノアでそれぞれ個人の判断でたまたま同じことを考えていた。


「スミレ先輩でも、お一人で勇者パーティーを抑えるのは大変じゃないですかぁ?私がやりますよ?」


「はっ、大変なのはオメーの方だろ。アタシ一人でも大丈夫だっての」


クレア達お互い協力を持ちかけようとは考えなかった。一人でもなんとかなるという自信があり、ゴウキに対して正当に評価の出来ない馬鹿達など、大した存在であるはずがないとも考えていた。
むしろ自分一人で徹底的に勇者パーティーを痛めつけて、自信をへし折ってやろう・・・二人してそんなところまで全く同じことを画策していたのである。
当の本人達は否定するだろうが、思考回路が似ている。


「クレアっての、それだけ私に譲ってくれたらそれでいいです」


「ふざけんな。そりゃこっちの台詞だ」


二人とも闘志を燃やしていた。
ゴウキがいないところでなら知られることもないから止められることもない・・・思いっきりやれる。
ゴウキを屈辱的な目に遭わせた仇敵を、この手でぶちのめすことができる。


「二度と王都を歩けないようにしてやりましょう」


ぐるぐる目になって意気込むリノアを見て、スミレはちょっぴりだけヒいていた。
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