361 / 508
ゴウキ・ファミリー
クレアの多難 その8
しおりを挟む
クレアが裏付け調査を行ってから翌々日、彼女率いる勇者パーティーの集合の日になった。
「・・・はぁ」
まだ他に誰も来ていないパーティーの拠点の部屋で一人、クレアは疲れたように溜め息をつく。
裏付け調査を行った翌日、クレアは少しばかり調べものをしたり、いろいろと考え事にふけっていた。肉体的には休めているが、頭のほうはちっとも休まっていない。むしろ遠征から帰還している道中の方がずっと楽だったと言える。
噂の裏付けが終わった後ゴウキ・ファミリーについて少し調べてみた結果、ザッと調べただけでも既にそこそこの経済力と軍事力を持っていることが判明した。
ゴロツキどもの戦闘力は未知数だが、ゴウキ自身は言わずもがな、彼を慕って集まったゴウキ・ファミリーの初期メンバーも相当に強いという。
冒険者は魔物の素材などをギルドに持ち帰って換金するが、その一度の換金額もバルジ王国での新記録を更新したというのを聞いたときはクレアも驚いた。
ゴウキ・ファミリーはゴウキだけが実力の突出した烏合の衆ではない。その幹部と思わしき連中も相当に手強そうだということ気付いたクレアは、この問題は自分だけでは解決できないことを悟った。
ゴウキが暴力によって王都の治安を脅かしているのであれば、強制的にでもそれを排除しなければならない。しかしそにはそれを越える力を持つ必要がある。で、あればクレア一人ではなく、勇者パーティー総出で取り掛からなければならない。
クレアは今回のパーティーの集合で打倒ゴウキ・ファミリーをメンバーに呼びかけるつもりでいた。
『魔人』対策に仲間に引き入れたいとしていた人物と、むしろ敵対することになってしまうことになるが、それでも良いかメンバーに是非を問わねばならなかった。
「仕方がないことよね・・・」
クレアは既に半分ほどゴウキの復帰については諦めをつけている。
確かに戦力としては頼りになるが、道理を踏み外した男をそのまま仲間にして連れていく気にはならないからだ。
説得し、ゴウキが改心してくれるならそれでも良い。だが、恐らくそう簡単にはいかないだろう・・・
ゴウキを力で一度制し、ゴウキ・ファミリーを解体する必要がある。そうすれば王都に平和が戻ってくるが、もう彼を勇者パーティーの一員として戻すことは不可能になるだろう。世間体がそれを許さないし、そうまで拗れればゴウキ自身もそれを望むまい。
クレアはゴウキとの決別を覚悟してでも、それでも勇者としての自分の矜持を曲げるつもりはなかった。この決断をするために悩みに悩み、目の下にはクマが出来ている。
メンバーが集まれば、クレアは事の次第を話し、この決意を聞いてもらうつもりだった。
だが、この後パーティーメンバーが集まったとき、クレアはとあることで驚愕して腰を抜かしそうになるのだった。
「・・・はぁ」
まだ他に誰も来ていないパーティーの拠点の部屋で一人、クレアは疲れたように溜め息をつく。
裏付け調査を行った翌日、クレアは少しばかり調べものをしたり、いろいろと考え事にふけっていた。肉体的には休めているが、頭のほうはちっとも休まっていない。むしろ遠征から帰還している道中の方がずっと楽だったと言える。
噂の裏付けが終わった後ゴウキ・ファミリーについて少し調べてみた結果、ザッと調べただけでも既にそこそこの経済力と軍事力を持っていることが判明した。
ゴロツキどもの戦闘力は未知数だが、ゴウキ自身は言わずもがな、彼を慕って集まったゴウキ・ファミリーの初期メンバーも相当に強いという。
冒険者は魔物の素材などをギルドに持ち帰って換金するが、その一度の換金額もバルジ王国での新記録を更新したというのを聞いたときはクレアも驚いた。
ゴウキ・ファミリーはゴウキだけが実力の突出した烏合の衆ではない。その幹部と思わしき連中も相当に手強そうだということ気付いたクレアは、この問題は自分だけでは解決できないことを悟った。
ゴウキが暴力によって王都の治安を脅かしているのであれば、強制的にでもそれを排除しなければならない。しかしそにはそれを越える力を持つ必要がある。で、あればクレア一人ではなく、勇者パーティー総出で取り掛からなければならない。
クレアは今回のパーティーの集合で打倒ゴウキ・ファミリーをメンバーに呼びかけるつもりでいた。
『魔人』対策に仲間に引き入れたいとしていた人物と、むしろ敵対することになってしまうことになるが、それでも良いかメンバーに是非を問わねばならなかった。
「仕方がないことよね・・・」
クレアは既に半分ほどゴウキの復帰については諦めをつけている。
確かに戦力としては頼りになるが、道理を踏み外した男をそのまま仲間にして連れていく気にはならないからだ。
説得し、ゴウキが改心してくれるならそれでも良い。だが、恐らくそう簡単にはいかないだろう・・・
ゴウキを力で一度制し、ゴウキ・ファミリーを解体する必要がある。そうすれば王都に平和が戻ってくるが、もう彼を勇者パーティーの一員として戻すことは不可能になるだろう。世間体がそれを許さないし、そうまで拗れればゴウキ自身もそれを望むまい。
クレアはゴウキとの決別を覚悟してでも、それでも勇者としての自分の矜持を曲げるつもりはなかった。この決断をするために悩みに悩み、目の下にはクマが出来ている。
メンバーが集まれば、クレアは事の次第を話し、この決意を聞いてもらうつもりだった。
だが、この後パーティーメンバーが集まったとき、クレアはとあることで驚愕して腰を抜かしそうになるのだった。
0
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる