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ゴウキ・ファミリー

クレアの多難  その6

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人づてに噂を聞くのと、実際に被害を被っているとされる人間から話を聞くのでは、信ぴょう性が大きく異なる。
クレアの両親はあくまで他人から聞いて話であって、裏付けはしていない。だからクレアとて心は揺らぎこそしたが、まだいくらかゴウキを信じることができた。

しかし今セントラルギルドの職員は、被害者の立場としてゴウキのことを糾弾している。
ギルドの職員がそんなウソをつくわけがない・・・と、クレアは昨日の査定のトラブルのことも忘れてすっかり愕然としてしまっていた。


「本当ですか・・・?それは・・・」


半信半疑・・・いや、ほとんど信じてしまっているような心境でクレアはそう訊ねる。
職員は「やっぱりこいつ馬鹿だわ」と思い、つい口元が緩みそうになるのを堪えながらそれに答える。


「ええ、本当ですとも。今や彼はゴロツキを従えて暴力に訴え、酒場などを脅して回って無理矢理高値で警護の依頼をもぎ取っています。契約者は誰にどう問われてもゴウキ達と口裏合わせするように脅されていますので、憲兵なども手が出せないのです。今や王都はゴウキ・ファミリーの支配下に置かれそうにありますよ!」


ついついペラペラと口から出まかせを言う職員だが、ここ最近はゴウキが原因、または遠因によるセントラルギルドの損失が大きいので彼に対する恨みつらみは相当なものだったので、一度口に出してしまえば止まらなかった。


「それからフォースギルドというところと手を組んで、悪質な冒険者の引き抜きもやっているんです。中には騙されて不当な契約を結ばされている冒険者もいます。当ギルドからどれだけの人数の冒険者を連れていかれてしまったことか・・・とにかくそんな風にゴウキは自分の勢力を伸ばしているんですよ!」


うひゃー、大分めちゃくちゃ盛っちゃったけど大丈夫かなー?
ひとしきり話し終えてふと冷静になった職員は流石にちょっと・・・と心配になったが、クレアは俯きながら顔を真っ赤にして震えていた。
普通なら自分のあまりの盛りように怒っているのか、と心配になることもあるだろうが、職員はそうではなかった。クレアは馬鹿だ。ギルド職員の言うことを鵜呑みにしているという確信があった。きっとクレアはゴウキのあまりの悪逆非道っぷりに怒っているのだろう・・・と。

そして悲しいかな、それは事実だった。


「はぁ・・・誰かゴウキ・ファミリーを・・・ゴウキを打ちのめしてくれたらって思うんですがね。力で支配しているのなら、力でもって彼らが倒れている様を見せつけてやれば、その呪縛も解けるんじゃないかなーとか思うんですがねぇー」


チラッチラッと時折クレアの方をのぞき見ながら、職員はミエミエの演技でそう言ってのける。
大根役者も良いところだが、しかしそれでも騙される者はいた。


「・・・そうですか。いろいろと教えていただき、ありがとうございました」


静かにそう言うと、クレアは俯いたままその場を去って行った。


(さぁ、どうなるかな?まぁ、今よりはギルドにとって悪いことにはなるまい)


いい加減な嘘を吹き込んだ職員は、無責任にそんなことを考えるだけだった。勢いで言い尽くしてしまったので、後のことなど考えてはいない。
これが後のギルドの死亡フラグになるのであった。
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