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ゴウキ・ファミリー
クレアの多難 その5
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クレアはいてもたってもいられずに屋敷を飛び出した。
パーティーメンバーとはじっくりと休息を取り、二日後に拠点で再会することになっており、また国王からの呼び出しもすぐには来ないと聞いていたので、この日のクレアは自由だった。
だからクレアはゴウキを探すことにした。
元より国王からの命令で新たに遠征をすることになるのなら、出発までにどうにかゴウキを連れ戻せないか、あるいはそのための足掛かりとして話が出来ないか、そんな風に考えてはいたのだ。
だが、今となってはクレアがゴウキに会いたい理由の第一には「噂は本当なのか」を問いただすというのが出てきている。
(まさか、そんなことしていないと思うけど・・・)
ゴウキがゴロツキをはべらして力を無暗に誇示するような男ではないことは、クレアも良くわかっていた。
誤解されやすい性格だが、彼は決して悪に染まるような人間ではないと。だからクレアは勇者パーティーのメンバーにゴウキを推薦したのだと。
クレアはずっと自分に言い聞かせながら、ゴウキが良く姿を現すというフォースギルドへ早足で向かっていた。
これまでずっと入れ違いだったが、今回ばかりはどうにかして会いたいと思っていた。ギルドの前で待ち伏せしてでも顔を見ないと、どうしたって引っ込みがつかないほど気持ちは強くなっていた。
そうしてせかせかと歩いているときだった。
「おや、これは勇者様ではないですか」
自分を呼び留める声に、クレアは足を止めた。
「こんなときに」といった苛立ちにも近い気持ちもクレアにはあったが、それでも勇者としての世間体もある以上は、知人と行き会うことがあったらしっかりと失礼のないように接しなければならない。
「あっ・・・」
クレアは声をかけていた人間の顔を見て驚いた。
昨日セントラルギルドで揉めた査定係の職員だったからだ。
「あの、昨日はどうも・・・」
既に話はついたとはいえ、後味の悪い別れ方をしたことを思い出して気まずい思いをするクレア。
職員は笑顔を浮かべながらペコリと頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ失礼を」
職員からしても露骨なペテンにかけようとして失敗しているので、気まずいことには違いはなかった。
職員は昨日のことからは話を逸らすことにした。
「一体どうされたのですか?この先にあるのは・・・」
クレアが向かう先は、フォースギルドのある地域であり、その先には王都のスラムの第4区がある。
一般人はおろか、クレアとて普段は用のない場所であった。そこに職員は疑問を抱いていた。
「あぁ・・・それは・・・」
ゴウキのことを話そうとして、クレアはハッとなった。
先ほど両親から聞いたゴウキの噂について、職員にも確認しようと思ったのである。
ゴウキ・ファミリーがセントラルギルドの仕事を奪っているというのなら、きっと職員なら知っているだろうと。
そう思いクレアが問うと、職員は悔しそうに表情を歪ませながら絞り出すような声で答えた。
「えぇ、その通りです。酒場に直接圧力をかけて、不当に巡回警備の依頼を我々ギルドからもぎ取っているんですよ」
クレアにゴウキのことについて質問された職員は考えた。
クレアをけしかけて憎きゴウキを成敗してもらおうと急遽思いついたのだ。
目の前のお人よしの意識高い系の馬鹿女は、きっとギルドのちょっとした嘘にでも騙されて、良いように動いてくれるのではないかと。
そして思惑通り、昨日のミリアのように妨害が入らない今、クレアは職員の言葉を鵜呑みしてしまっていた。
パーティーメンバーとはじっくりと休息を取り、二日後に拠点で再会することになっており、また国王からの呼び出しもすぐには来ないと聞いていたので、この日のクレアは自由だった。
だからクレアはゴウキを探すことにした。
元より国王からの命令で新たに遠征をすることになるのなら、出発までにどうにかゴウキを連れ戻せないか、あるいはそのための足掛かりとして話が出来ないか、そんな風に考えてはいたのだ。
だが、今となってはクレアがゴウキに会いたい理由の第一には「噂は本当なのか」を問いただすというのが出てきている。
(まさか、そんなことしていないと思うけど・・・)
ゴウキがゴロツキをはべらして力を無暗に誇示するような男ではないことは、クレアも良くわかっていた。
誤解されやすい性格だが、彼は決して悪に染まるような人間ではないと。だからクレアは勇者パーティーのメンバーにゴウキを推薦したのだと。
クレアはずっと自分に言い聞かせながら、ゴウキが良く姿を現すというフォースギルドへ早足で向かっていた。
これまでずっと入れ違いだったが、今回ばかりはどうにかして会いたいと思っていた。ギルドの前で待ち伏せしてでも顔を見ないと、どうしたって引っ込みがつかないほど気持ちは強くなっていた。
そうしてせかせかと歩いているときだった。
「おや、これは勇者様ではないですか」
自分を呼び留める声に、クレアは足を止めた。
「こんなときに」といった苛立ちにも近い気持ちもクレアにはあったが、それでも勇者としての世間体もある以上は、知人と行き会うことがあったらしっかりと失礼のないように接しなければならない。
「あっ・・・」
クレアは声をかけていた人間の顔を見て驚いた。
昨日セントラルギルドで揉めた査定係の職員だったからだ。
「あの、昨日はどうも・・・」
既に話はついたとはいえ、後味の悪い別れ方をしたことを思い出して気まずい思いをするクレア。
職員は笑顔を浮かべながらペコリと頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ失礼を」
職員からしても露骨なペテンにかけようとして失敗しているので、気まずいことには違いはなかった。
職員は昨日のことからは話を逸らすことにした。
「一体どうされたのですか?この先にあるのは・・・」
クレアが向かう先は、フォースギルドのある地域であり、その先には王都のスラムの第4区がある。
一般人はおろか、クレアとて普段は用のない場所であった。そこに職員は疑問を抱いていた。
「あぁ・・・それは・・・」
ゴウキのことを話そうとして、クレアはハッとなった。
先ほど両親から聞いたゴウキの噂について、職員にも確認しようと思ったのである。
ゴウキ・ファミリーがセントラルギルドの仕事を奪っているというのなら、きっと職員なら知っているだろうと。
そう思いクレアが問うと、職員は悔しそうに表情を歪ませながら絞り出すような声で答えた。
「えぇ、その通りです。酒場に直接圧力をかけて、不当に巡回警備の依頼を我々ギルドからもぎ取っているんですよ」
クレアにゴウキのことについて質問された職員は考えた。
クレアをけしかけて憎きゴウキを成敗してもらおうと急遽思いついたのだ。
目の前のお人よしの意識高い系の馬鹿女は、きっとギルドのちょっとした嘘にでも騙されて、良いように動いてくれるのではないかと。
そして思惑通り、昨日のミリアのように妨害が入らない今、クレアは職員の言葉を鵜呑みしてしまっていた。
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