『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

ゴウキ・ファミリー

セントラルギルドの変化 その９

「なぁガルフよ、最近ギルドっておかしくねぇか？」


とある冒険者が、街でたまたま出会った顔なじみの冒険者と酒場で飲んでいるときにそう切り出した。ガルフと呼ばれた冒険者は「あぁ、まぁね」とすぐにピンと来たようでそう返す。王都でギルドと呼べばセントラルギルドのことだ。それだけ冒険者にとってはセントラルギルドが馴染み深いが、故にここ最近のセントラルギルドがおかしいとは誰もが感じていた。


「元々がめついところがあったけどよ、ここ最近はもっとひどくなった感じだよな。素材の買い取りを安くしておいて、金に文句を言えば『代わりにこの割の良い仕事を紹介しますよ』と他の仕事を強引に進めてきやがる。意味がわからんわ」


「結局、ギルドの利益のために働けっていう思惑が透けて見えるんだよな」


二人ははぁと溜め息をついて同時にビールに口をつける。


「商売だからと言えばそれまでだけどよ。それにしたって最近はあんまりじゃねぇか？少し前は何か向こうで勝手に忙しくなってて、俺達のこと今以上にぞんざいに扱ってたしよ」


「冒険者ギルドって、元は冒険者の利益を守ったり、安全に冒険するためのサポートをするのが目的で設立されたって話だぜ？他の国の冒険者に聞いたら、向こうじゃもっと全然冒険者に寄り添った対応をするし、暴利を貪ったりするようなことしないらしいんだよ。どっちかというとこの国のギルドがおかしいんだ」


「なんだそりゃ。そんなギルド無くなっちまえよ！」


はぁ、と二人同時に溜め息をつく。
そんな二人のところに、酒場のウエイターがやってきた。


「お客さん、話が聞こえてしまったんだが、そんなに今のギルドが嫌なら他のギルドに鞍替えしては？」


「えっ」


ギルドの鞍替えを提案したのは、ゴウキ達が常連となっている『カムシン』のウエイター。
彼らが飲んでいた酒場はカムシンであった。

カムシンはこうして酒場でセントラルギルドに対する愚痴を洩らしている冒険者を見かけると、フォースギルドへの鞍替えを推奨している影の功労者である。
フォースギルドはここ最近、爆発的に知名度を向上させてはいるが、それでもまだ存在を知らない冒険者は多い。
あるいは名前を知っていても、鞍替えに踏ん切りのつかない者もいた。鞍替えに失敗してセントラルギルドに睨まれると、今後王都で冒険者活動をするのに支障をきたすからである。


「フォースギルドってところなんだけど、実際にそこに鞍替えして今より良くなったって冒険者が何人もいるよ。話とか聞いてみて、良かったら考えてみたら？」


決して押し付けない程度に勧めておく。
これだけで現状に不満のある冒険者は行動に移し、そして実際にセントラルギルドからフォースギルドへの鞍替えをするという例が、散見されるようになるのであった。