326 / 507
ゴウキ・ファミリー
セントラルギルドの変化 その8
しおりを挟む
「・・・なんだと?」
セントラルギルドのギルドマスターであるフミオンは、執務室で部下の報告を聞き、額に青筋を立てていた。
部下が報告したのは、先に行われたセントラルギルドとレジプスとの取引における商談の結果についてである。
「はい、レジプス側としてはこれまで通りの単価での取引は応じるものの、値上げには一切応じられないと。それに、取引量も従来より25%ほど少なくしたいとのことです」
部下は淡々と報告する。この部下は以前は悪い報告をするときはフミオンの機嫌を伺ってオドオドしていたものだが、もうどのように報告したところでフミオンの雷が落ちるのはわかりきっているので、もはや無の境地で淡々と報告書を読み上げていた。
「商談にはシィルが当たったんだよな!?アイツは何をやってるんだ!値上げして損失を補填しないといけないところを、値は据え置きの上で取引量が減るだと!?俺があれだけ発破かけたのにこのザマか!!?」
「ギルド長。実はそれについてはもう一つ報告がありまして」
「なんだ!?」
「レジプスとしては今回はこの単価での取引に応じるものの、次回分からは値下げを要求することになるとのことです。応じられない場合、取引の停止もやむを得ないと」
「・・・はぁ~~?」
フミオンは自分の耳を疑った。
レジプスは上玉の取引相手だが、力関係としては完全にセントラルギルドが上で、搾取しているとさえ言って良い状態だった。それだけスライムジェルの単価を上げたところで、レジプスとしては必需品だから必ずセントラルから買わなければいけないはずだった。
それが、今は値下げを要求してくるどころか、取引の停止も辞さないと言ってきている。一体何が起こっているのかフミオンには理解できなかった。
「他に安く卸してくれる取引先が見つかったとて、ウチのように安定して大量に卸すことなどそうそうできるものじゃないだろう!」
「その辺については現在調べております。いずれにせよ、現状ではどれだけ交渉してもレジプス側の態度は変わらないと思われます」
「ぐぬぬ・・・シィルめ!色気が取柄なのだから、相手を色仕掛けしてもう少し有利に運んだらどうなのだ!役立たずめ!!」
フミオンは怒りで顔を真っ赤にするが、実のところこの交渉結果もシィルが泣きの最終手段として体を張ったから勝ち得た結果であったのだ。そうでなければ現段階で値引きしなければ取引の成立すらしなかっただろう。
こうしてセントラルギルドは、従来通りのスライムジェルの取引にすら漕ぎつけなくなり、資金繰りが一気に悪化したのであった。
セントラルギルドのギルドマスターであるフミオンは、執務室で部下の報告を聞き、額に青筋を立てていた。
部下が報告したのは、先に行われたセントラルギルドとレジプスとの取引における商談の結果についてである。
「はい、レジプス側としてはこれまで通りの単価での取引は応じるものの、値上げには一切応じられないと。それに、取引量も従来より25%ほど少なくしたいとのことです」
部下は淡々と報告する。この部下は以前は悪い報告をするときはフミオンの機嫌を伺ってオドオドしていたものだが、もうどのように報告したところでフミオンの雷が落ちるのはわかりきっているので、もはや無の境地で淡々と報告書を読み上げていた。
「商談にはシィルが当たったんだよな!?アイツは何をやってるんだ!値上げして損失を補填しないといけないところを、値は据え置きの上で取引量が減るだと!?俺があれだけ発破かけたのにこのザマか!!?」
「ギルド長。実はそれについてはもう一つ報告がありまして」
「なんだ!?」
「レジプスとしては今回はこの単価での取引に応じるものの、次回分からは値下げを要求することになるとのことです。応じられない場合、取引の停止もやむを得ないと」
「・・・はぁ~~?」
フミオンは自分の耳を疑った。
レジプスは上玉の取引相手だが、力関係としては完全にセントラルギルドが上で、搾取しているとさえ言って良い状態だった。それだけスライムジェルの単価を上げたところで、レジプスとしては必需品だから必ずセントラルから買わなければいけないはずだった。
それが、今は値下げを要求してくるどころか、取引の停止も辞さないと言ってきている。一体何が起こっているのかフミオンには理解できなかった。
「他に安く卸してくれる取引先が見つかったとて、ウチのように安定して大量に卸すことなどそうそうできるものじゃないだろう!」
「その辺については現在調べております。いずれにせよ、現状ではどれだけ交渉してもレジプス側の態度は変わらないと思われます」
「ぐぬぬ・・・シィルめ!色気が取柄なのだから、相手を色仕掛けしてもう少し有利に運んだらどうなのだ!役立たずめ!!」
フミオンは怒りで顔を真っ赤にするが、実のところこの交渉結果もシィルが泣きの最終手段として体を張ったから勝ち得た結果であったのだ。そうでなければ現段階で値引きしなければ取引の成立すらしなかっただろう。
こうしてセントラルギルドは、従来通りのスライムジェルの取引にすら漕ぎつけなくなり、資金繰りが一気に悪化したのであった。
0
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。
子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。
ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。
それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる