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ゴウキ・ファミリー

誠意無き商談   ~ハレイド視点~

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私はレジプス王家から来た、バルジ王国セントラルギルドとのスライムジェルの貿易について交渉権を持っているハレイドだ。
私がこうしてセントラルギルドまで商談に訪れるのは、もう何度目になるかわからない。だが、この日の商談はこれまでのそれとは大きく違っているものがあった。


「今回までは今までと同じ条件で取引をしてもそれは構わない。だが、今後は徐々に取引量を減らしていくことになるだろう。向こうが値下げをするというのなら、また考えないでもないが」


王は私に対してこう言った。
これまでレジプスはセントラルギルドから多くのスライムジェルを買い付けてきた。だが今回の商談を起点として、これからは取引を縮小する方向へ持っていくことが決まっている。

これまでは商談のたびにスライムジェルを値上げするセントラルギルドに対し、我々レジプスはそれに応じるしかなかった。レジプス周辺の魔物にスライムはいない。だからあらゆる生活必需品の原材料となるスライムジェルは外国から買うしかないのだ。
セントラルギルドは我々の足元を見て高値をふっかけてくるが、それでも国が近くにあり、更に安定して大量のスライムジェルを売ってくれる貴重な相手だ。だから既に最初の頃の取引額から倍以上の額になっている状態でも、我々はそれを支払うしかなかった。

しかし最近、劇的に状況が変わった。
バルジ王国のとある複数の商会が、今セントラルギルドが卸してくれている量と同じだけ売ってくれるという。それも、これから更に増やすことも可能であるという話も聞いた。しかも価格は半値以下なのだ。考えるまでもなく、取引先をそちらに変えたほうが良い。

しかし、その新しいツテも本当に安定して供給し続けてくれるのかどうかはわからない。だから当面は様子見として、まだセントラルギルドからもいくらか買っても良いのではないかという話にはなっていた。
だから私は従来通りの価格なら、とりあえず今回は契約しても良いと思っていた。

だが、目の前にいる美人だがいつも高圧的なシィルという女は、挨拶もそこそこにいきなり値上げをすると言い出したのだ。
私は思わず反射的に言ってしまった。


「でしたら今回のお取引はなかったことに」


と。
つい感情が先走り、独断でとんでもないことを口走ってしまった。
だが一応は私の権限で決めても良い範囲でのことだ。小言は言われるかもしれないが。
私は少しばかり内心青ざめそうになっていたが、それでもこれは言って良かったかもしれないと思った。目の前の高圧的な美人が、露骨に狼狽えている姿を見ることが出来たからだ。


「あの、良ければ今夜、お食事などしながら商談の続きをするというのはいかがでしょう?」


これまで高圧的で突き放すような態度ばかりだった女が、縋るような目で私を見てそう言っていた。思わずゾクリとした。
ま・・・どうせ取引の結末がどうなっても大きな問題にならないというのなら、ちょっとぐらいは彼女に付き合っても良いかな?
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