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ゴウキ・ファミリー

スミレの計画 その3

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作戦通りに勇者クレアを王都から遠ざけることに成功させたが、スミレの計画はこれで終わりではない。むしろここからがスタートだった。
今は一時的にクレアを遠ざけただけであり、いずれ彼女が戻ってきた際には再びゴウキが勧誘されるという危機が迫ってくる。
あくまでスミレの目標は、である。


「さて、どうしたものかな・・・」


スミレの頭には漠然と「クレア達よりもスミレ達と一緒にいる方を優先したい」とゴウキに強く意識させることくらいしか出来ることはないか、などと考えていた。
しかしスミレには不安があった。
恐らく現段階でも既にゴウキはクレア達のパーティーよりも、スミレ達と始めたパーティーの方を優先して考えてくれている・・・ そういう確信はあったが、それでも絶対にゴウキが自分達から離れないかと言うとそうではないとスミレは考えていた。

クレアがどうしてもゴウキが必要だと頭を下げて頼み込んできたら・・・

どれだけ無碍にされようと執拗にお願いにやってきたら・・・

涙を流して懇願されたら・・・

そうまでされたとき、果たしてゴウキはクレアの頼みを断れるのか?もしかしたら彼は情に絆されてしまうのではないか。
クレアはスミレ達よりもゴウキと付き合いは長いし、今のところ問題の起きていないスミレ達に比べ、ゴウキが抜けたことでパーティーとして十分に機能していないクレア達は、各段に切羽詰まっている状態と言える。
情に厚いゴウキが自分の感情よりもクレア達を優先し、絆されてしまう可能性が十分にあった。

ではゴウキを自分から遠ざけないために何をするべきなのか。




ゴウキが戻る気もないくらいクレアの悪評をばら蒔く?

ーーいや、ゴウキにはそういうのは効かなそうだ。

ゴウキが離れそうになったらこっちも泣いて縋る?

ーー恥ずかしいし、それは最後の手段にしとこう。

ゴウキが離れないよう、いっそになって結びつきを強くする?

ーーは、恥ずかしいし、それは本当に本当の最後の手段にしとこう。



自問自答を繰り返し、あれこれ手を考えるが決定打に欠ける。
やきもきしながら日々を過ごしていたスミレだったが、あるとき事態が大きく動くことになった。

それがスラリー子爵の一件である。
本来ならスラリー子爵の当初の願い通り、大量に狩っていたのスライムを殲滅して終わりである。

だが、ここでゴウキはそうはしなかった。
スラリーに同情し、セントラルギルドへの怒りに燃え、常識で考えるならあり得ないほどのお節介を焼き始めた。情に厚く、損得を考えない。これがゴウキという男・・・行動を密にして改めてそれがわかったスミレだったが、彼女はこれに機を見出した。


「チャーンス・・・」

一人ぼそりとしたそのスミレの呟きは、誰の耳にも入ることはなかった。
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