307 / 504
ゴウキ・ファミリー
スミレの計画 その3
しおりを挟む
作戦通りに勇者クレアを王都から遠ざけることに成功させたが、スミレの計画はこれで終わりではない。むしろここからがスタートだった。
今は一時的にクレアを遠ざけただけであり、いずれ彼女が戻ってきた際には再びゴウキが勧誘されるという危機が迫ってくる。
あくまでスミレの目標はゴウキがクレアの元に戻れない状態にすること、である。
「さて、どうしたものかな・・・」
スミレの頭には漠然と「クレア達よりもスミレ達と一緒にいる方を優先したい」とゴウキに強く意識させることくらいしか出来ることはないか、などと考えていた。
しかしスミレには不安があった。
恐らく現段階でも既にゴウキはクレア達のパーティーよりも、スミレ達と始めたパーティーの方を優先して考えてくれている・・・ そういう確信はあったが、それでも絶対にゴウキが自分達から離れないかと言うとそうではないとスミレは考えていた。
クレアがどうしてもゴウキが必要だと頭を下げて頼み込んできたら・・・
どれだけ無碍にされようと執拗にお願いにやってきたら・・・
涙を流して懇願されたら・・・
そうまでされたとき、果たしてゴウキはクレアの頼みを断れるのか?もしかしたら彼は情に絆されてしまうのではないか。
クレアはスミレ達よりもゴウキと付き合いは長いし、今のところ問題の起きていないスミレ達に比べ、ゴウキが抜けたことでパーティーとして十分に機能していないクレア達は、各段に切羽詰まっている状態と言える。
情に厚いゴウキが自分の感情よりもクレア達を優先し、絆されてしまう可能性が十分にあった。
ではゴウキを自分から遠ざけないために何をするべきなのか。
ゴウキが戻る気もないくらいクレアの悪評をばら蒔く?
ーーいや、ゴウキにはそういうのは効かなそうだ。
ゴウキが離れそうになったらこっちも泣いて縋る?
ーー恥ずかしいし、それは最後の手段にしとこう。
ゴウキが離れないよう、いっそ深い関係になって結びつきを強くする?
ーーは、恥ずかしいし、それは本当に本当の最後の手段にしとこう。
自問自答を繰り返し、あれこれ手を考えるが決定打に欠ける。
やきもきしながら日々を過ごしていたスミレだったが、あるとき事態が大きく動くことになった。
それがスラリー子爵の一件である。
本来ならスラリー子爵の当初の願い通り、大量に狩っていたのスライムを殲滅して終わりである。
だが、ここでゴウキはそうはしなかった。
スラリーに同情し、セントラルギルドへの怒りに燃え、常識で考えるならあり得ないほどのお節介を焼き始めた。情に厚く、損得を考えない。これがゴウキという男・・・行動を密にして改めてそれがわかったスミレだったが、彼女はこれに機を見出した。
「チャーンス・・・」
一人ぼそりとしたそのスミレの呟きは、誰の耳にも入ることはなかった。
今は一時的にクレアを遠ざけただけであり、いずれ彼女が戻ってきた際には再びゴウキが勧誘されるという危機が迫ってくる。
あくまでスミレの目標はゴウキがクレアの元に戻れない状態にすること、である。
「さて、どうしたものかな・・・」
スミレの頭には漠然と「クレア達よりもスミレ達と一緒にいる方を優先したい」とゴウキに強く意識させることくらいしか出来ることはないか、などと考えていた。
しかしスミレには不安があった。
恐らく現段階でも既にゴウキはクレア達のパーティーよりも、スミレ達と始めたパーティーの方を優先して考えてくれている・・・ そういう確信はあったが、それでも絶対にゴウキが自分達から離れないかと言うとそうではないとスミレは考えていた。
クレアがどうしてもゴウキが必要だと頭を下げて頼み込んできたら・・・
どれだけ無碍にされようと執拗にお願いにやってきたら・・・
涙を流して懇願されたら・・・
そうまでされたとき、果たしてゴウキはクレアの頼みを断れるのか?もしかしたら彼は情に絆されてしまうのではないか。
クレアはスミレ達よりもゴウキと付き合いは長いし、今のところ問題の起きていないスミレ達に比べ、ゴウキが抜けたことでパーティーとして十分に機能していないクレア達は、各段に切羽詰まっている状態と言える。
情に厚いゴウキが自分の感情よりもクレア達を優先し、絆されてしまう可能性が十分にあった。
ではゴウキを自分から遠ざけないために何をするべきなのか。
ゴウキが戻る気もないくらいクレアの悪評をばら蒔く?
ーーいや、ゴウキにはそういうのは効かなそうだ。
ゴウキが離れそうになったらこっちも泣いて縋る?
ーー恥ずかしいし、それは最後の手段にしとこう。
ゴウキが離れないよう、いっそ深い関係になって結びつきを強くする?
ーーは、恥ずかしいし、それは本当に本当の最後の手段にしとこう。
自問自答を繰り返し、あれこれ手を考えるが決定打に欠ける。
やきもきしながら日々を過ごしていたスミレだったが、あるとき事態が大きく動くことになった。
それがスラリー子爵の一件である。
本来ならスラリー子爵の当初の願い通り、大量に狩っていたのスライムを殲滅して終わりである。
だが、ここでゴウキはそうはしなかった。
スラリーに同情し、セントラルギルドへの怒りに燃え、常識で考えるならあり得ないほどのお節介を焼き始めた。情に厚く、損得を考えない。これがゴウキという男・・・行動を密にして改めてそれがわかったスミレだったが、彼女はこれに機を見出した。
「チャーンス・・・」
一人ぼそりとしたそのスミレの呟きは、誰の耳にも入ることはなかった。
0
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
これが私の兄です
よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。
理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。
だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。
何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。
周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。
婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる