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ゴウキ・ファミリー

スミレの計画 その2

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「やれ」


「はい」


スミレは一人、とある弱みを握っている高位貴族に命令し、勇者クレアのパーティーに指名依頼を出させた。理由は何かにつけてゴウキに会おうとするクレアをしばらく遠ざけるためである。
これまではニアミスでたまたまゴウキとクレアが出会うことはなかったが、これからもそれがそう都合良く続くはずもない。
スミレの計画のためには、今しばらくゴウキとクレアが顔を合わせてはいけないのだ。


「少しばかり遠くへ行かねばならないような、そのような依頼を出しておきます」


この高位貴族は勇者パーティーのスポンサーの一人であり、クレアからしても無碍に出来ない人物であった。だからどのような依頼でも、よほどの理由がない限りはクレアは断ることはないだろうとスミレは考えている。


「もしクレアが渋るようならアタシからいくらでも出すから、とにかく王都から遠ざけとけよ」


スミレの強烈な執念に高位貴族は一瞬動揺するが、しかしそれを表に出すことなく彼はスミレの言う通りに動いた。

(勇者クレアを遠ざけて、一体何をするつもりなのだろう・・・?)

貴族が内心そう思っていると、スミレは見透かしたように言った。


「余計なことに首を突っ込まないように」


底冷えするようなスミレの圧の込もった声に、貴族はヒェッと声を上げ、ただただコクコクと頷く。





「でも・・・これだけじゃ不安だな・・・しばらくたらい回しにしとくか」


スミレは作戦の確度を上げるため、他にクレアと繋がりのある高位貴族にも声をかけた。

スミレは自身が持つ飛びぬけた能力を駆使して、王都中の貴族の悪事の弱みを握っている。
それはその弱みを持つ貴族の悪事を防ごうという狭義心からではなく、有事の際にこうして貴族としての地位を役に立たせるために押さえている彼女の手札であった。
スミレはその手札を惜しみなく切り、とにかく王都からクレアを遠ざけようと奔走する。



「王都から離れる・・・?でも、仕方ないわね、あの方の依頼だったら・・・」


クレアはゴウキとの再会を果たせずして王都から離れることに難色を示しつつも、勇者パーティーが何かしら世話にあっている貴族たっての願いとあっては断ることも出来ず、スミレの思惑通りに王都を離れていった。

それを立て続けに仕掛け、クレアは当面ろくに王都に戻ってくることは出来なくなった。
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