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ゴウキ・ファミリー

ゴウキの名を売る

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セシルの考えは、ゴウキの舎弟たちを全員依頼主である店の巡回警備傭員にするということであった。
定期的に巡回し、店側から連絡があればただちに駆けつけ、問題のある客を抑え込むというもの。
依頼主は何軒もあるが、その全てで同時に問題が起きることはまずない。30人でも十分に対応できるだろうというのがセシルの考えた。

しかし、それに対してゴウキは当然の疑問を抱いた。


「果たして・・・あいつらにそれが務まるのか?」


舎弟どもは基本的にあまり強くない。何しろ競争に負けた弱者の集まりなのだ。
それは徒党を組んで、一斉に襲い掛かられたゴウキ自身が身をもって知っている。

冒険者で栄える王都での酒場などの酔客といえば、当然冒険者が多くなる。そして王都で生計をたてられている冒険者は舎弟らより強い。弱い者が強い者を抑え込むことなどできないのだ。


「それはどうにかなるだろ。やつらには基本的に複数人で行動させる。多勢に無勢なら大概の冒険者ならなんとかできるはずだ」


「うーん、まぁ・・・けど、それでも勝てない酔客だっていると思うぞ?」


いかんせん、個人の力が弱い。だからこそ半グレに落ちたのだが、群れたところで暴れ客が腕自慢の冒険者だったらどうにもならないかもしれないし、暴れる客がたまたま数多くいるときもあるかもしれない。


「そうだな。だから、最初のうちはお前さんがケツ持ちすることがあるかもしれん」


「は?」


「舎弟どもに『王都で有名なゴウキの舎弟だ』と喧伝させる。お前さんの怖さを知ってる者はそれだけで大人しくなるだろうし、ならなきゃお前さんが出るときだ。そこで徹底的に暴れ客をぶちのめしてまた有名になれば、舎弟どもに逆らうやつはどんどん少なくなる。結果、大した実力を持ってない舎弟どもでも警備巡回が難なくこなせるようになるというわけだ」


「ま、待て・・・そこで俺の名を出すのか?」

ゴウキは自分の名が使われることに難色を示す。
ゴウキは王都ではとっくに有名人だが、彼自身は目立つことに抵抗を感じていた。しかし今更である。


「出さなくてどうするんだよ。お前さんはもう良くも悪くも目立っちまったんだから、せめてそれを利用したほうがいいだろう。これで酔客に困る店は助かり、王都の治安のよくなる。半グレどもも社会復帰できる」


目立ちたくないゴウキに対し、セシルはむしろ名を利用しろという。
確かにゴウキ一人が我慢すれば、そのほかは万事うまくいく・・・そんな感じではあるが、ゴウキはまだ唸るだけで今一つ決断できないでいた。

(王都が荒れてるのは間接的に俺の責任でもある・・・だが、もう少し俺の名を出さないでなんとかまとまらないものか・・・?)

自分の名がまた悪い意味で有名になる気がするーー ゴウキはそう思わずにいられなかった。

そんな悩んでいるゴウキを見て、セシルがゆっくりと諭すように言う。


「ゴウキ。この警備巡回は、これまではセントラルギルドが高い報酬を取るだけ取っておいて、ろくに冒険者を派遣しなかったり質の悪いやつよこしたりと、いい加減な仕事をしていたってものなんだぜ。ここで仕事をお前さんが奪わねえと、またセントラルギルドが暴利を貪って王都の善良な店が搾取されちまうんだ。それでもいいのか」


セントラルギルドーー
その単語を聞いたとき、ゴウキは唸るのをやめて「そうか」とだけ言い、覚悟を決めた。
セントラルギルドに搾取される人を助け、奴らに一泡吹かせられるなら・・・と。
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