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ゴウキ・ファミリー

安い労働力

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「つまりだな」


スミレの言葉を理解できないゴウキに対し、横で聞いていたセシルが口を挟んだ。


「自分で考えないから、立場に適当なネームバリューさえつけば多分どんな実入りでも仕事を選ばないでやるし、王都から離れたくないからそうそう辞めることもねぇ。使分には、悪くない人材だってことだ」


そう言ってセシルは意地の悪そうな笑みを浮かべている。


「まずまず食えるだけの収入があれば、奴らはきっといい感じに働いてくれると思う。とりあえずのとこのゴウキが持つ『組織』の足掛かりになるんじゃね?ってアタシは思う」


スミレが続く。ここでゴウキはようやく合点がいったといった顔をする。


「・・・つまり、安く使ってやれということか?」


「そう。賢くなくて、安くて、タフで、逃げ出さない。使う側にとっちゃある種便利な存在じゃん?」


スミレの言葉に、ゴウキは頭を振った。


「いやいや、俺は経営者じゃなくて冒険者だっての。別に会社起こしたいわけじゃねーよ」


「ゴウキ、お前さんがやってるのは、その冒険者様とやらから逸脱してきてんだよ。やってることに対して金はあっても組織力、立場・・・総合的な力ってもんが足りてねぇ。そんなんじゃいずれより大きな力に潰される。セントラルギルドとかな」


セシルに言われてゴウキは口を噤む。それは今日ディックにも言われたことだからだ。
「組織ねぇ」とピンと来なくて、いずれは持たなきゃいけないことになるのか?程度に考えていたことだが、まさかここまで早く決断のときが迫ってくるとは思ってもみなかったゴウキは、大きく溜め息をついた。


「俺はただの冒険者で十分なんだが、そんな俺が人を使う?あいつらを使ってやるとして、何をやらせたらいいんだ?俺は別に事業者でもなんでもないんだぜ」


組織として抱え込む以上は、仕事をさせねばならない。
だが、ゴウキ自身は事業者でないために、襲撃者どもに与えてやる仕事など持っているはずもなかった。


「仕事ならウチのギルドにゃたくさん雑用的な依頼があるからよ。とりあえずそれやってもらうわな」


セシルが笑いながら言った。
雑用・・・一日やれば確かに最低限食っていくだけの金にはなったな・・・と、自分の経験からゴウキは考えた。


「定期的な警備の仕事とか、そういうのもじゃんじゃん入って来てるんだが、中々人材が見つからなかったんだよな。やつらならうってつけだ」


セシルの様子を見るに、少なくとも全くやらせる仕事がないわけではなさそうだとゴウキは思ったが、それでも一つの問題に気付く。


「そんな地味な仕事・・・あいつらがやるか?」


無能なくせに仕事を選んでいた襲撃者達のことを思い出し、ゴウキは問う。
だが、そんなゴウキの質問にはスミレが答えた。


「そのためにゴウキの舎弟にするのさ。王都で有名なゴウキの傘下にいるってネームバリューがあれば、きっとあいつら安くても地味でも喜んで仕事やるよ」


にんまりと笑いながらそういうスミレに、ゴウキは「えぇ~?」と怪訝な表情をするのであった。
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