『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

ゴウキ・ファミリー

不運なデニス

「ん・・・？一体どうしたんだ？」


所用が終わってゴウキ・ファミリーのホームへ帰っている途中のデニスは、通りがかったフォースギルドの異様な雰囲気を感じ取って思わず中に入った。
そこで目にしたのは人、人、人、見知らぬ30人以上がすし詰めで正座をしているという、予想だにするはずのない光景であった。


「こ、これは一体・・・」


デニスはヒいていると、それを見つけたスミレが大声で声をかけた。


「おーデニス。丁度いいじゃん。少しアタシとゴウキは席を外すからさ、ちょっとここにいるやつらが他にところへ行っちゃわないか見ていてくれね？」


スミレの唐突なお願いに、デニスは唖然とする。


「見ている・・・俺が・・・？一体何をすれば・・・」


「あぁ、特に別に・・・ただどっか行っちゃいそうになったら手荒にしてでも止めてくれればいいから」


「えっ・・・」


「んじゃ、よろしく」


困惑するデニスを置いて、スミレはゴウキに首に腕を回すと「ちょっとこっち来いよ」と言ってギルドの奥まで引っ張っていってしまった。


「あ、ギルドマスターも」


そう促され、セシルもそれについていく。
後に残されたのは困惑するノーラとデニスのみであった。


（うっ・・・一体どうすれば・・・間が持たない・・・！）


正座している襲撃者達の意識の大半が自分に集まっていることを察したデニスは、胃痛が始まり吐き気を堪えていた。だが、幸いというべきかそれは長くは続かなかった。


「もういいわ、あのゴウキはここにいないし、俺はこの隙に帰るぜ」


一人の頭の悪そうな大男が立ちあがり、ゴウキとスミレの姿がないことを確認してギルドの出口に向かって歩き出した。そこにはデニスが立っているが、ゴウキと違っておどおどしているように見える彼を脅威を思っていないのか、大男は力づくで排除してでもギルドを出ていこうとしているようだった。

「おい、そこの兄ちゃん。邪魔をするなら痛い目を見るぜ。どきな」


立ち塞がるように立つデニスを手で追い払う動作をした大男は、次の瞬間に背筋が凍った。


「どこかへ行くようなら、手荒にしても良いんだったな」


どこか薄ら笑いを浮かべるデニスを見て、大男は得体の知れない恐怖を感じていた。大男の動きは止まったが、もう遅い。デニスは既に殺る気まんまんであった。


「丁度いい！間が持たなかったんだ！一振りボコられろ！！」


大勢の前に立たされた極度のストレスを、デニスは制裁という名の暴力で憂さ晴らししたのであった。