『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

ゴウキ・ファミリー

正論

「スミレ・・・」


突然目の前に現れたスミレの姿に、ゴウキは驚きの声を洩らす。


「突然出てくるなよ」


驚かされたことに抗議の声を上げるゴウキに


「まぁ、そこは忍者だから」


と素っ気なく答えるスミレ。

忍者といえば突然現れるものか、確かにそうかと妙な納得をするゴウキ。



「・・・じゃなくて、なんだよいきなり現れて」


ゴウキは襲撃者たちを再度折檻しようと前に出ようとして、それをスミレに阻まれた形になっている。
行動を中断させられ、彼の心には少なからずモヤモヤしているものがあった。


「大騒ぎし過ぎなんだよゴウキはさ。アタシ達のホームまで怒声が聞こえてきたっての」


じと目でそうスミレに言われ、ゴウキは「えぇ？」と素っ頓狂な声を上げる。


「俺、そこまでうるさかったか？」


ゴウキが確認するように言うと、周囲にいつの間にか湧いていたギャラリー達が一斉に頷いていた。
それを見てゴウキは「ぐっ・・・」と言葉を詰まらせる。
冷静になったゴウキは確かに頭に血が上っていたことを思い出し、一気にトーンダウンした。


「小さな子供はもう寝てる時間だっての。近所迷惑ってのを考えないといけねーんじゃねーの？説教するにしても時間と場所を弁えろって」


「お、おぅ・・・」


スミレの正論にゴウキは完全にしおらしくなっていた。
襲撃者から身を守るまでは仕方ないにせよ、その後の説教タイムでうるさくしてしまったのは自分の落ち度だと自覚する。


「大体さ、こういう手合いは一方的に説教したって、そういうのを受け止めるだけの心がないと響かないから、結局意味なんてないんだっての。説教しやがってーって、ヘイトを生んで終わり。やり方ってのがあんのさ」


諭すように言うスミレに、ゴウキは訝しむ。


「・・・殴ってわからせりゃいいのか？」


「違う。それは最終手段」


最終手段なんかい！と襲撃者たちは内心でツッこむ。


「コイツラ半グレってやつだろ？話をするなら、とりあえず全員場所変えるじゃん」


「どこに？」


「うるさくしても良い場所、だよ」




そしてスミレに誘導されるままにゴウキや襲撃者たちが連れてこられたのは、フォースギルドだった。



「・・・え？うるさくしても良い場所って思ってるの？ここを？」


突然ぞろぞろと人を連れてきたゴウキ達に腰を抜かしながらも事情を聞いたセシルが、なんとも納得できないといった顔をして呆れた。