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ゴウキ・ファミリー

ガラではないが・・・

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「組織・・・か」


ゴウキはディックとの飲みの帰り路、ずっと彼に言われたことを引きずり呟きながら地面に目を落として歩いていた。
あまりに考えこみ過ぎて、会話を諦めたディックに「今日はこれまでにするか」と言われるほどだった。


組織の重要性は身を持って知っている。
だが、ゴウキは今のスミレ達とだけつるむのが楽しかった。少なくとも今はそこに極力異物を入れたくないーーそうとすら考えている。

人は群れると、しばしば方向性についてまとまりがつかなくなることがある・・・それでもなんだかんだで組織が回るなら良いが、最終的には立ち行かなくなり、崩壊してしまうということがザラだーー それをゴウキは勇者パーティ・・・クレア達といたときの経験で痛いほど実感した。
ゴウキがいたときの勇者パーティーは、最低限の活動は出来ていたと思うが、ゴウキという不協和音があったことによって、お世辞にもう問題がないとは言えない不健全な状態であった。

そのために今ではクレアがゴウキをパーティーから排除したことについても、組織の長としては正しい判断であったとすら考えている。ゴウキという異物を取り除くことによって、クレア達は少なくともパーティー崩壊の危機を避けることが出来ただろうと。
クレアがゴウキを排除したというのは実際のところは誤解であるが、ゴウキ本人はそう考えていた。

ディックとやっていたときは多少いざこざもあったが、ディックと馬が合ったのもあって一応はうまくいっていた。今のゴウキ・ファミリーも、皆がゴウキを慕っているために少なくとも表面上は問題なく機能している。

だがこれはたまたまなのだ。運が良かっただけだ・・・勇者パーティーの一件から、ゴウキはそう考えるようになっている。

そして


(今の状態を壊したくないーー)


現状が破壊されることを、とにかくゴウキは何よりも恐れていた。

ずっと抑制された状態だったゴウキが、今初めて何の懸念もなく冒険者として気の許せる仲間と活動を続けていけているーー この幸せを、楽しみを無くしたくなかった。

気の許せる面子と、ただただ冒険者としてやっていければ良いーー

本来ならそうだ。
だが、ディックが言うようにゴウキのやろうとしていることは、とうに冒険者としての枠を越えたものばかりだ。
慈善事業まがいのお人よしの冒険者だってもう少し分を弁えるのではないかと思う。恐らくクレアだってそうだろうと。だが、ゴウキは自分はそれすら出来ていないことを認識していた。


「普通の冒険者としていたいと言いつつ、それをいちいち乗り越えようとしているのは俺だもんな・・・」


ただの名うての冒険者、という枠を越えて暴走しがちなゴウキ。
無理を通せばいずれ跳ね返ってくる。そのときに果たして今の愛おしい日常が守れるかは誰にもわからない。


「組織か・・・ガラじゃねぇんだけどな」


そう呟いたときだった。
ゴウキは自分の周囲に、いつの間にか複数人の気配があることを察した。
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