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ゴウキ・ファミリー

束の間の平和と予兆

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「ゴウキ先輩・・・スラリー子爵の香水の匂いがします・・・しかも、随分強く」


スラリーと話を終え、いつもの酒場カムシンで再合流して打ち上げをしようとやってきたゴウキを待っていたリノアは、鼻をすんすんとさせてジト目でゴウキにそう迫った。


「えっ?そ、そうかぁ?ちょっと長い間話をしてたからなぁ~?」


まさか抱き着かれたなどと言えないゴウキは、目をそらしながら思わず棒読みでそう言い訳をした。


『ゴウキさん、すみません胸をお借りしてしまって。お見苦しいところをお見せしてました・・・』


『いえ、別に・・・』


『でもゴウキさん、私ゴウキさんに興味を持ったのは事実なのです。今度良かったらお食事でも、いかがでしょうか?』



スラリーと最後に交わしたやり取りがゴウキの脳裏に思い出される。

(やはりモテ期・・・?モテ期なのか・・・?)

ゴウキとてそういうのがわからないほどの鈍感ではない。だがしかし、経験を積んでいないためにどのように振る舞えば良いのかさっぱりわからず、今でも半分混乱していた。スミレやリノアとなぁなぁのままなのもこのためである。


「随分匂いが移ってるなぁ~?かなり近づかないとそこまで匂いが移らねーと思うんだよなぁ。長い間お話、ねぇ、本当にお話だけだったのか気になるぞ」


忍者として鼻の利くスミレは能面のような表情でゴウキにそう詰め寄る。
販路についての話をしていたこともあるが、お茶をご馳走になったのもあってなんだかんだで数時間ほどスラリー邸に滞在してしまっていたのだ。


「一体をしていたんでしょうねぇ・・・?」


ジト目のままゴウキに顔を近づけるリノア。


「何を?いや、別にどうってことはしてないぜ」


をしてただとぉーっ!?」


どういう聞き違いなのか、リノアが激昂してゴウキの胸倉に掴みかかる。
デニスはそんなゴウキ達をクスクス笑いながら眺めていた。



ーーーその時であった。


「・・・!」


ふっと、スミレは何かの気配に気付き、ハッと酒場の入口を見た。


「・・・気のせい?」


しかし、スミレが見たそこは特に変わったことはなかった。
誰かに見張られているーー そんな感覚があったが、気のせいだったかとスミレは思った。


しかしこれは気のせいではなかった。
後に大きな騒ぎになる予兆であったが、このときのゴウキ達がそれを知るはずもない。
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