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ゴウキ・ファミリー

貫禄のある男

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「ゴウキ先輩、カッコイイです」


ゴウキのお披露目をして一瞬の間を置いて、リノアは両手を組みながら惚けた表情を見せそう言った。


「ん・・・?そ、そうか?」


ゴウキは思ってもみない反応が出たことで少しばかり戸惑った。


「ま、まぁ、中々悪くないんじゃね?」


腕を組み、少し顔を赤らめて僅かに視線を逸らしながら、ドモりつつそう言うスミレ。


「いいと・・・思うよ」


こちらも少し顔を赤らめていうデニス・・・ これにはゴウキも少しヒいた。


「そ、そうか・・・悪くないか・・・」


スミレ達に褒められ、満更でもなさそうにゴウキは後頭部をかく。
ここで微妙な反応をされたら立ち直れないかもしれない・・・そう考えていただけにゴウキの内心の喜びは大きかった。


「少し年上っぽい恰好な気がするが・・・」


ゴウキが着ているスーツと呼ばれる服は、王都では貴族でもあまり未成年が着る服とは言えないものだった。高価であるというのもあるが、そこそこ成功した事業者など、ある程度年齢を重ねた人間が良く着る服である。
背伸びした若い貴族令息が夜会で着ることもあるが、凡そ似合うことはない。


「ゴウキは貫禄あるから大丈夫じゃね?」


スミレが言うと、リノアもデニスもうんと頷く。


(それは俺が老け顔ってことか・・・?)


ゴウキは微妙な気持ちにはなったが、実際のところよく似合っていた。
若者にあまり着られない理由の一つに「貫禄がないと服に着させられている」感がしてしまうというのがあるが、本当にゴウキには非常に良く似合っていたのである。
実際自分が着てみたところを鏡で見たときも「少し派手では」と口では言いつつ、意外と悪くないのではとゴウキは内心思っていたほどだ。


「今度からずっとその姿でいてもいいくらいですよ。そうしましょう」


「冗談言うなよ」


リノアの言葉に、ゴウキは苦笑いを浮かべた。


「いいと思うけどね・・・」


スミレもそう言うが、ゴウキは首を横に振った。
普段から今みたいな目立つような恰好なんてしていられねーよとぼやくが、このときのゴウキは本気でそう思っていた。

後にリノアの言葉の通りになるなどとは、このときのゴウキが知る由もなかったが。




その後に出席したパーティーでも、ゴウキのコーディネートは絶賛された。
ムハンは「悪魔のような実力に見合う、実に威圧感ある姿だ」と本人の知らぬところで呟いていたが。
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