上 下
271 / 494
ゴウキ・ファミリー

赤備え

しおりを挟む
スミレ達と合流する少し前のことーー


「あ、赤ぁ~~?」


最初にゴウキが用意された衣装を見たとき、あまりの衝撃に彼は素っ頓狂な声を上げてしまった。
派手な色だ。まず第一印象がそれだった。


「いくつかの国では高名な武将を象徴する色でもある赤にしてみました。砂漠の魔物を素手で倒すほどの、まさに無類の力強さを誇るゴウキ様に相応しい色と言えましょう」


セイラは微笑を浮かべながらそう言った。

国のよって赤が高名な武将の色であることはゴウキも知っていた。その武将そのものが率いる部隊全体がその色の装備で統一されることもあるという。
赤という高価な希少色をわざわざ装備品にあしらうほどの精強な部隊であると知らしめると同時に、何より目立たせることによって当の兵は「見られている、恥ずかしい戦いはできない」と意識を持って奮闘するし、それを目の当たりにする敵には威圧感を与える・・・ いろいろとメリットがあって使われる色であることはゴウキも知識としてあった。


しかし、それを自分が着る・・・となるとは夢にも思っていなかった。
意識の高いお貴族様か、道化師のようではないかと正直思った。


「きっとゴウキ様にお似合いになると思いますわ」


セイラはそう言って譲らない。任せるという流れになった以上、何が出てきても着るつもりでいたが、流石に予想外過ぎてゴウキは驚いてしまっていた。

しかし、実際に身に着けて見ると赤のスーツに黒のシャツ、グレーのネクタイは、黒髪で長身のゴウキに良く合った。
髪は下ろさずに上にあげ、よりワイルドな雰囲気が増している。
ゴウキが気になったのはこれまで前髪で隠していた額の傷が露わになったことだが


「歴戦の勇者といった佇まいです。本当にお似合いになられております」


セイラは顔を赤らめながら、ほぅっと溜め息をついた。見ると周囲にいる侍女も同じような反応を示しているのを見て、ゴウキは当惑した。
歴戦の勇者といった佇まい・・・?威圧的ってこと?

とはいえ自分がこれまでも無意識ながらも威圧的なビジュアルで多少なりとも威圧して回っていたことは間違いはなく、今更な話かとゴウキは思った。


「・・・皆に何て言われるかな」


少しばかりドキドキしながら、ゴウキはスミレ達の待つ控室に歩いていったのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生王子はダラけたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,226pt お気に入り:29,421

【完結】勇者のハーレム要員など辞退します

恋愛 / 完結 24h.ポイント:754pt お気に入り:2,377

汝の隣人をAIせよ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:305pt お気に入り:9

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:944pt お気に入り:4,401

真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:887pt お気に入り:3,838

推しの悪役令嬢を幸せにします!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:211

二重人格令嬢、王子様に恋をする。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:33

処理中です...