『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

真の商人とは

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「サンドアリジゴクがいたところに、確かに大きな空洞になっているな」


「元々蟻地獄ってそういう構造になっていたと思うけど、それをアジトに転用してるんじゃね?」


「じゃあ、あそこが盗賊のアジトになっているってことですかね?」


「リノアがコウモリで見たものと照らし合わせると・・・可能性はあると思う」




ゴウキ達は主のいなくなった蟻地獄の上から、ぽっかりと穴が開いた中心部を見下ろしていた。
ちなみにサンドアリジゴクは横に寝かせてあり、「盗賊のことが片付いたら金になりそうな部位をバラしてみる」と言ってムハンを驚愕させていた。
もはやムハンは置物のように大人しくなり、ゴウキ達の動向をただただ後ろから見守るのみとなった。既に彼の精神のキャパがいっぱいいっぱいで、いちいち突っ込みを入れる気すら無くなってしまったのだった。


「おいムハンさん」


そんなムハンに無情にもゴウキは声をかける。


「これからもしかしたら盗賊達とひと悶着あるかもしれねぇ。もしあぶれたやつがこっちに逃げてきたら・・・まぁうまくやってくれ」


うまくやってくれとは!?
ムハンがそう問おうとする前に、ゴウキ達は蟻地獄を滑り落ちていく。
ムハンはそれを呆然と見送った。
あれは駄目だ。キチ〇イだ。キ〇ガイの集団なのだ。関わってはいけないのだ。
ムハンはそう思ってその場を去ろうと思ったが、逃げ出そうとしたその足が動かなかった。


「なっ・・・どうして!」


慌てるムハンだが、ふっと気付く。自分の体が、遺伝子が拒否しているのだ。自分の、商人としての魂がこの場から去ることを否としているとムハンは気付く。


「もしや・・・あいつらといれば金になると、これ以上ない商機があると・・・そういうことか?」


ムハンは独り言ちる。
彼はかつて商売の師でもあった己の祖父のことを思い出していた。




「お爺様。私が目指すべき商人とは、どうあるべきものだと思われますか?」

ちょっとそういうお年頃だったムハンは、特に意味もなく祖父に問うた。


『ムハンよ。真の商人とは、商機を探るは無用であるということじゃ』


だが孫のそんな質問に、祖父はそう答えたのだ。


『真の商人として目覚めたそのとき、五感が、空気が、否が応でも商機を求めて働きかけるものじゃ。そのサインを見逃してはならん。委ねるのだ。自分に刻まれし勘に。さすれば、商機はあちらからやってくる。どうあっても逃すことはあるまいて』



要約すると、商人として自分が完成されたとき、商機を自分から探しに行くのではなく、向こうから勝手にやってくるようになる、というご都合主義な話だった。
だが、ムハンは今がまさに祖父が言っているその状況なのではと思った。
この場から去ることは商機を逃すことになる・・・それを五感が訴えかけてきているのだと、そう考えていた。


実際はショッキングな出来事が重なりに重なって、足がすっかり竦んでしまっていただけなのだが、ムハンはそのように都合よく解釈していた。
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