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ゴウキ・ファミリー

警戒心の強い団長

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「おいおい、くだらない冗談じゃないだろうな?」


サンドワームが殺されたことに、ハンマは驚きつつも部下にそう念を押して訊ねる。


「俺達も目を疑いましたが、本当です。それに、牙を素手で引き抜いておりました。恐るべき力を持った冒険者だと思われます」


「本当に冒険者か?魔物じゃねぇのか?」


「いえ・・・多分冒険者かと・・・魔物・・・と思っても仕方ない恐ろしさはありますけど」


報告した部下は記憶を頼りに話すが、見たのは人間か?と問われると怪しいところがあるなと思い言葉を濁した。それだけ衝撃的なものを見たのだ。


「額に大きな傷のある男です。他は男が二人に、女も二人です。そいつらの実力は不明です」


「それと、その中の一人が俺達の存在に気付いている可能性があります」


「何?」


「レンズ越しに見ていた俺と目が合いました。たまたまという感じではありませんでしたが・・・」


「ふーむ・・・」


ハンマはその報告を聞いて、「気のせいだ」と一蹴したりはしなかった。常日頃から国軍や冒険者たちから盗賊団を守るために、あらゆる可能性を吟味し、リスクは取り除いてきた慎重さが彼にはある。


「ま、この場所はバレることはねぇだろうが、とりあえず丸一日はアジトから誰一人外には出るな。用心しておくに越したことはねぇ」


「へぇ、わかりました」


ハンマはそう部下に命じると、目を閉じて祈るように手を組んだ。


「ワームちゃん・・・安らかに眠ってくれ・・・」


ハンマが目に涙を浮かべながらそうしていると、周りにいた男たちも同様に祈りだす。

ゴウキが殺したサンドワームという魔物は、この盗賊団が幼体の頃から可愛がっていたペットのような存在だったからだ。この盗賊団はこの砂漠に出現する魔物のほとんどを手懐けている。そうすることで、本来危険地帯で人など立ち入らないと思われている場所にアジトを構えることが出来た。
手懐けられた魔物は戦力にもなり、隠れ蓑にもなる・・・これが初代団長の頃から続いている盗賊団の防衛手段だった。


「しかし、ワームちゃんを素手で殺した・・・ねぇ。流石にないと思うが、それでも一応は準備はしておくべきか・・・?」


ハンマは一人呟いて、自分の手にある鍵をじっと見つめた。
万が一今来ている冒険者達と戦うことになったとき、必要になるかもしれないと考えていた。
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