『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

ゴウキ・ファミリー

王族から盗賊にジョブチェンジ

レジプスに巣くう盗賊団ーー

実は彼らのその歴史は長く、誕生期は数百年前の政争まで遡る。
当時のレジプスは王位争いにより兄弟で骨肉の争いが起きていたが、結果として暗愚ではあるが、操り易い故に高官達の支持の厚かった弟が勝利した。

元来優秀だった兄の方は政争に負けてからすぐさま宮殿を去ったが、その兄についていった人間達で構成されたのが盗賊団の前身であるレジスタンスである。
暗愚な弟に任せたのではレジプスは衰退するだけ、いずれは自分が王権を取らねばならないーーと、大規模な反乱を起こすその時のために兄は活動を開始した。

その一つが通商破壊である。
レジプスは砂漠の真ん中にあり、食料から何から外部から持ち込まなければ生活することさえできない。砂漠を渡る隊商を襲撃し、金や物を奪うーーーシンプルだが、これがレジプスに対して最大に有効な攻撃になるのであった。
しかし、これを繰り返しているうちに兄は気付いた。


「レジプスで王をやるよりも気軽だし、よっぽど良い暮らしが出来るし、もうこっちが本業で良いのではないか？」


と。

今でこそレジプスは交通の要所を領土に一部持つことで莫大な通行税が手に入っているが、当時はそれがまだほとんどなかった。つまり慢性的な財政難だったのである。
兄は間違いなく優秀で、最初こそ国を立て直そうと躍起になっていたが、高官も大多数の国民も自分を支持してはくれなかった。そんな国の王であることに魅力を感じず、一気に冷めた王は盗賊としては砂漠を生きる遊牧民になろうと方針転換したのである。
実際民の目を気にすることなく略奪品で贅沢出来るし、治世に頭を痛めることもない。
王宮のようなところに堂々と住むことはできないが、そんなものはメリットと比較すると些細なものと思っていた。
そして盗賊団は国軍からの必死の追撃をのらりくねりと躱し続け、こうして数百年経過した今も生き永らえている。



「・・・なんだと？ワームちゃんが殺されただと？」


復権を諦めた兄・・・の子孫である現盗賊団団長ハンマは、部下の報告を聞いて眉を顰める。
魔法の力により光を放つ石が照明になっている洞窟の中に彼らはいた。ここは盗賊団のアジトであり、ゴウキ達を望遠鏡で発見した男達は、急いでアジトに戻って団長であるハンマに見たままを報告していたのだ。