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ゴウキ・ファミリー

ゴウキの憤慨

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「事業立ち上げの途中で父は亡くなりましたぁ。その意志を継いでようやくここまで漕ぎつけたのに、セントラルギルドに見放されて万策尽きましたぁ。スライムジェルの客先を開拓をしようとしましたが、やはりギルドを介さないとそれを見つけるのも難しく・・・」


「スラリーさん・・・」


スライムジェルをただ持っていても、それを定期的に購入してくれる所を見つけることは難しい。
基本的にはスライムジェルはセントラルギルドから安定して購入できるものなので、セントラルに睨まれてまで実績も何もない養殖のスライムジェルを買うメリットがないのである。
例えセントラルより安くジェルを買えるとしても、リスクがある以上はどうしても手を出しづらい。



「愛情深く育てたスライムをただ消滅させるなんて可哀想だし辛いですがぁ、このままだとこの地下室をぶち破るまで繁殖し続けて、街中に溢れ出してしまうまでになってしまうのでぇ、今この段階で始末をつけるしかないと思ったんですぅ。その、財政難ですので、あまり報酬のほうは用意出来なかったのですが・・・」


スラリーは気まずそうに俯いたが、やがて最後にはしっかりとゴウキの目を見て言った。


「私達がやるとなると、どうしても情が湧いてしまって中途半端なことになってしまいますぅ。ですから、皆さまにどうかよろしくお願いしますぅ」


そう言って頭を下げるスラリーを、ゴウキはただ黙って見ていた。


「あの・・・どうされましたかぁ?」


頭を戻したスラリーは、ゴウキの顔を見て戸惑いがちにそう問う。
ゴウキが思いっきり顔を顰めていたからだ。


「・・・スラリーさん、ただこのスライムの始末をつけるつもりらしいが、そんなことをする必要はねぇ」


「えっ?」


「俺がこのスライム達のジェルの販路を開拓してみせる」


いつの間にか丁寧語を使うことすら忘れ、ゴウキはそう口走っていた。
スミレ達はそんなゴウキをやれやれと言わんばかりに苦笑いして見ている。


「まさか・・・そんなこと出来るのですかぁ?」


「できらぁ!」


疑問を呈すスラリーに、ゴウキは勢いで答えた。勝算など無いが、セントラルギルドの理不尽に苛まれている人間を見ると、どうしてもなんとかしてやりたいと思わずにいられない。


「セントラルギルドに目のもの見せてやろうぜ!」


ゴウキのその言葉に、スラリーはただただ気圧されてコクコクと頷くのみだった。
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