『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

文字の大きさ
上 下
211 / 508
ゴウキ・ファミリー

勇者パーティーの再開

しおりを挟む
勇者パーティーであるクレア達は、王都に帰ってから数日後・・・たっぷり休憩も取ったということで再度結集して活動を再開しようとしていた。
本来ならばもっと日を取って久々のバカンスでもするつもりだったが、今は皆がなんとなくそんな心境にならなかった。むしろすぐにでも活動を再開したいと考えてさえいる。


「ゴウキに負けていられない!僕達もすぐに実績を上げて、汚名を返上しよう!!」


とりわけリフトのやる気の向上っぷりは抜きん出ていた。勇者パーティー結成以来最大のやる気の出しっぷりと言えるかもしれない。活躍の噂の絶えないゴウキに対して負けん気を発揮しているのと、クリスタルダンジョンの依頼の失敗による不名誉の払拭の両方に燃えている。


「えぇ、すぐにでも何か依頼を請け負いましょう」


クレアも当然ながらやる気に燃えていた。
クレアがここ数日、ゴウキに謝罪しようと彼を探していたが、ついに見つかることはなかった。フォースギルドに行きゴウキの居所に心当たりがないか訪ねてみるが、個人情報については教えることは出来ないと受付嬢のノーラに突っぱねられてしまった。仕方がなく周囲に聞き込みをすると、最近は指名依頼がゴウキのパーティーに舞い込んでいて、数日帰って来ないときが何度もあるということがわかった。
こうなるとただ待っていても仕方がない。いずれタイミングが一致して会えることもあるだろうと、とりあえずはクレアは自分のところのパーティーの活動を優先させることにしたのだ。

それにクレアは一応国王にゴウキのパーティー復帰について嘆願をしてきた。保留にされてはいるが、きっとそれなりにアクションを起こしてくれているのではないか・・・とクレアはほのかに期待をしていた。ならば今は待つことしか出来ない、自分は自分に出来ることをやろうと考えていたのだ。
実際には国王はクレア達に見切りをつけるかどうかの瀬戸際にあったため、クレアが期待しているようなことはないのだが・・・


「ミリア。しっかり休めた?」


依頼を請け負いに行くためのセントラルギルドへの道中、クレアはミリアに訊ねた。


「えぇ。お陰様でゆっくり体を休めることが出来たわ。これからもバリバリがんばっていきましょう」


屈託のない笑顔でそう答えるミリアに、クレアは数日前別れ際の顔色の悪さのことを思い出し、「調子が戻ったようで良かった」と思った。当時からそのことが気がかりだったのだ。


「ゴウキの記事のことも、きっと何かの間違いよね」


混乱の原因になったゴウキのゴシップのことについて、クレアが半分は自分に言い聞かせるように言った。
しかし、ミリアの反応はクレアの思っているそれと違っていた。


「ゴウキのこと・・・?一体何のこと?」


本当に何のことが心当たりがない、そんな感じでミリアはキョトンとしていた。


「えっ、あぁ、いや、別にいいの」


思っていた反応と違い、クレアは口ごもらせながら切り上げる。
そんなクレアのことを、ミリアは不思議そうな顔をして見つめていたが、特に追及してくることはなかった。


(なんだ、いつまでもあの事気にかけてるのって私だけなの?馬鹿みたいじゃない)


クレアは自分だけがいつまでもゴウキの記事のことを気にかけてばかりいるのだと解釈し、恥ずかしい気持ちになった。


(ミリアはもう彼のことは気にしまいと心の整理を終えたのだろう、とそれに比べて自分は・・・)


モヤモヤした気分のまま、クレア達はセントラルギルドへ到着した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...