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ゴウキ・ファミリー

そこまで弱くはありませんよ?

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ゴウキ達と後からついてくる新聞記者ドミンゴがクリスタルダンジョンに潜った。
スミレが黒鉄のダンジョンのときのように先行するが、ややもしないうちにダンジョンの魔物クリスタルウルフ数匹と遭遇。戦闘に突入した。



・・・が、スミレの爆薬付きクナイで一体が爆破され、ゴウキの拳で更に一体が粉砕、そしてデニスの刀によって最後の一体がバラバラになったことで、戦闘そのものは十秒も立たずに終了した。


「え・・・?」


後方から戦いの様子を伺っていたドミンゴは、唖然として目をぱちくりさせた。

ドミンゴは取材するにあたって今回潜ることになるダンジョンについて調べていた。そこで出現する魔物がどの程度の実力なのか、それを把握しておかないと自分の身を守りながら取材することが難しくなるからだ。
クリスタルウルフは体がクリスタルで構成されて刃物が通りづらい上に、動きは野生のオオカミよりも俊敏で、ヒットアンドアウェイを駆使しながら得物を弱らせて仕留めてくるという、近接戦を得意とするパーティーとは相性の悪い魔物だったはずだった。熟練した冒険者でも、ふとした油断から命を奪われることもあるという。

ゴウキ達はリノアを除き、基本的には接近戦主体のパーティーのはずだった。スミレに至っては基本的に斥候だ。
だが、後衛のリノアが黒魔法を使うことなく、ゴウキ達はクリスタルウルフを接近戦で瞬殺してみせた。


「つ、強い・・・」


ドミンゴは冒険者ではない。だが、何度か冒険者達の戦闘に張り付いて取材をしたことがあった。中にはS級ランクの冒険者の取材もあったが、ドミンゴは今回の一度の戦闘ではっきりと理解した。ゴウキ達はこれまで自分が取材してきたどの冒険者よりも強い、と。


(これは・・・凄いものが見られるかもしれない)


ドミンゴは唾をごくりと飲み込んだ。


しかし、そんなドミンゴとは別に釈然としない表情をゴウキは浮かべていた。


「・・・別に敵は前と比べて強くなったわけじゃねぇな」


自分の拳によって粉々に砕け散ったクリスタルウルフの破片を呆然と見下ろしながら、ゴウキは呟いた。


「そりゃ勇者様が弱かったんじゃね?」


呆れたようにスミレが言う。
スミレ自身もゴウキがあまりに警戒するので釣られて警戒していたが、あまりにあっけないので少しばかり落胆していた。


「本命はクリスタルゴーレムだろう・・・?そいつが強いんじゃないか?」


デニスは納刀しながら、それでも少しばかり落胆の色を隠せない顔で言った。強敵に出会えると思ったら肩透かしだった・・・そういった不満がデニスからも感じられ、ゴウキは首を傾げた。


「クリスタルゴーレムな・・・突然変異でそいつだけ強くなったんかな・・・」


クリスタルウルフのあまりの手ごたえの無さに落胆しているゴウキ・ファミリーの面々を見て、ドミンゴは開いた口が塞がらなかった。


(その魔物・・・そこまで弱くありませんよ!?)
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