『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

ゴウキ・ファミリー

フォースギルドの営業

勇者パーティーのメンバーであるリフトはバーレン侯爵と懇意であった。
新聞社を事業の一つに持つバーレン侯爵にすり寄ることによって、リフトは勇者パーティーの名声をメディアを使って上げて行っていたのである。

そんなリフトはゴウキを追い出すための時間稼ぎとして、バーレン侯爵から勇者パーティーへ一つの依頼を出させた。クリスタルダンジョンから魔物が持つ良質なクリスタルを取って来させるといった内容だったが、あくまで形だけの依頼であるが故に、成果のほどは本来はどうでも良かった。クエストに時間を割かせればその段階で目的は達成しているのである。

だが、いくら結果はどうであっても良いとはいえ、まさか本当に依頼を失敗して帰ってくるとはバーレンは思ってもみなかった。いくら形だけの依頼だとはいえ、B級ランクのダンジョンでの依頼などとうにＡ級を超越している冒険者であるはずのリフト達が失敗するわけがないと考えていたのだ。
あくまでフリだったために依頼が失敗したところで問題はないはずだったが、失敗など想定していなかったために、良質なクリスタルが手に入るという皮算用が崩れてしまった。

実はバーレンは表向きの依頼の理由である「良質のクリスタルを手に入れて自分の娘に細工品をプレゼントする」ことを実際にやろうとしていたのだ。
依頼に失敗したことで、バーレンは本来どうでも良いはずだった良質なクリスタルの入手に固執するようになった。
しかし依頼を失敗したリフト達に頼んでもどうせまた失敗してしまうーー
クリスタルダンジョンを攻略出来、かつ良質なクリスタルを採取できるだけのレベルの高い冒険者に正規に依頼をするとなると金額もかなり高いものになる・・・

そう悩んでいたところに、フォースギルドの営業がやってきた。


「あの勇者パーティーで剛腕を発揮したゴウキさんが新しく組んだ一流の冒険者パーティーなんです。今でしたらお求めやすい金額で指名依頼が出せるようになっております」


ゴウキのデータを資料でまとめ、ノーラはいかに彼が優れた冒険者であるかをプレゼンをしながら売り込んだ。

騎士団も捕縛に苦労した嘗てブラッディ・サイクロンと呼ばれた殺戮の騎士ラーハルトの撃退。犯罪者集団の制圧。直近だけでも有名な事案が二つもあるゴウキを割安で使うことが出来るーーー

バーレンはリフト達とゴウキとの確執に特に興味も無かったので、ゴウキに依頼することを決めたのだった。