『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

指名依頼

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「ゴウキさん喜んでください。指名依頼ですよ」


ゴウキ達がフォースギルドに戻ってくると、満面の笑みを浮かべた受付嬢ノーラが出迎えた。ノーラはいつだって笑顔だが、これまで見たことのないほどの上機嫌さだった。


「指名依頼・・・?」


ゴウキは怪訝な顔をして、ノーラに訊ねる。


「はい。バーレン侯爵という方が、ゴウキさん達に是非とも依頼したいことがあると」


にっこにこ笑顔でそう言うノーラを前に、ゴウキは首を傾げる。


「バーレン侯爵・・・?確か・・・」


名前を聞いてピンときたゴウキは記憶を探り、煙草を咥え火をつけながら思い返す。


「そうだ。リフトと懇意にしていた貴族だったような・・・」


ゴウキがまだ勇者パーティーにいたとき、バーレン侯爵からの依頼をたびたび受けていたことをゴウキは思い出した。普段は売名ばかりに躍起になっているリフトが、バーレン侯爵の依頼のときだけ積極的になっていたのを思い出す。
バーレン侯爵は手掛けている事業の一つに新聞社があったので、そこがリフトが忖度する理由だったのだろうなと当時からゴウキは考えていた。


「なんで俺なんだ?リフト・・・いや、クレア達に頼めばいいだろう」


懇意にしていたリフトではなく、ゴウキを指名して依頼してくることがゴウキは不可解だった。そんなゴウキの疑問を解消すべく、ノーラが答える。


「そのクレアさん・・・勇者パーティーが、どうやらこの依頼を失敗したそうなんですよ」


「え?」


ゴウキはあわや咥えていた煙草を口から落としそうになった。


「失敗した!?あいつらが?どうしてだ?」


「そ、そんなのわかりませんよぉ・・・」


慌てたゴウキに凄まじい剣幕で詰め寄られ、ノーラは涙目でたじたじになる。ゴウキはハッとして「すまん」と言ってノーラから離れ、しばし呆然とした。

ゴウキが覚えている限り、クレア達勇者パーティーがギルドの依頼を失敗したことは一度として無かった。全てがスムーズであったとまでは言わないが、それでも最後には必ず依頼を達したのである。依頼達成率は100%で、ギルドから表彰されたこともあった。


「・・・一体何の依頼だったんだ?」


冷静になったゴウキは、落ち着いた口調で再度ノーラに訊ねた。


「クリスタルダンジョンにいるクリスタルゴーレムから、希少な部位を採取することです」


「何だと!?」


仰天して叫んだゴウキの口から、今度こそポロっと煙草が床に落ちた。「ひぃっ」とノーラは声を上げ、ガタガタ震え出す。


「一度クリアしたことのあるダンジョンだぞ?それに、あいつらのレベルから考えればそこそこ格下の敵のはずだが・・・」


(なんだ?一体何が起きたんだ!?)


この時、ゴウキはクレア達の実力を疑わないために、クリスタルダンジョンで何かがあったのだと深入りして考えてしまっていた。彼らなら通常、失敗するはずのない依頼だ・・・そう確信していた。

ゴウキは何があったのかを知るためにも、その依頼を引き受けた。
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