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ゴウキ・ファミリー
心を折る
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圧倒されて動けないでいるウルラを他所に、動き出す2つの影があった。
影のひとつはノロスという男。
弓使いでウルラと同い年の男。ゴウキに弓を射っていた男だった。
彼はゴウキに見えない建物の屋根の上から弓をつがえていた。
(眠れ!)
狙いを定め、矢を放つ。
大型の獣でも数秒で昏倒する強さの麻酔の効く薬が塗ってある矢であり、まともに当たらずとも掠っだだけで行動不能に出来るシロモノである。
だが、その矢は横っ飛びしたゴウキに容易く躱された。
「えっ」
ノロスは捉えたと確信していただけに、避けられたことに愕然とする。ゴウキがチラリとノロスを一瞥したが、すぐに目線は別のものに向けられる。
「あいつ、気付いてた!?」
運悪く当たらなかったわけではない。明確にノロスの存在を認識した上で避けていた。
先程と違いゴウキの目の前にはウルラがいる。敵が目の前にいながら見えない位置から飛んで来る矢に反応してしまう、そんなゴウキにノロスは怯んだ。
そして一方でゴウキは、地上でもう一人の敵と戦っていた。
ゴウキに向かって戦斧を振り下ろそうとしているのはバルドーという大男。ゴウキよりも大柄なバルドーは、その剛腕で大熊も一撃で仕留めるほどの強力な一撃を戦斧で叩き込もうとしている。
当たれば大概の者は死んでしまいそうだが、ここで実際にゴウキを殺してしまうと困るのは占拠者達の方だ。問題が更に大事になるし、今度は憲兵も出てくるかもしれない。
だが、残念なことにバルドーは馬鹿だった。だから本気で戦斧で殺しにいった。
ノロスの射た矢に気を取られ、隙が生まれるはず。そこを狙えば、確実に仕留められるはずーー そう考えていた。
しかし現実は違った。
バルドーの振り下ろした戦斧を、なんとゴウキは拳で正面から迎え撃つ。
「え」
バルドーは呆けて動くことも出来なかった。
自分の自慢の戦斧が、目の前で粉々に砕け散ったからだ。
(こいつ、やべえ)
バルドーは頭が悪い。だが、このときばかりは躊躇わず殺しにいったこと自体は、本能的にゴウキを警戒したバルドーの勘が正しかったと言えるかもしれない。
なぜならそうまでしてかかったところで、傷すら満足につけられないからだ。
「ぶっ」
次の瞬間には、ゴウキの拳がバルドーの顔面に突っ込んだ。
タフが自慢のバルドーは、運が悪いことにその一撃で気を失うことはない。
「ちょっ、待てよ」
思わずバルドーが言ったはずのその言葉は、果たしてきちんと言葉に出来ていただろうか。ゴウキはバルドーの胸ぐらを掴み、ひたすらに拳を振るい続ける。
歯が折れ、鼻が潰れ、顎が砕かれてもゴウキは拳を止めない。
この場の誰かが回復魔法を使えるのなら、このダメージも回復させてしまう。そのときまたバルドーは襲ってくる…ゴウキはそう警戒していた。
だから、回復させられても脅威とならぬよう、ゴウキは徹底して心を折ることにしたのだ。
ゴウキの蹂躙を目の当たりにしたウルラはペタンとその場に尻餅をつくと、呆然とした表情のまま恐怖のあまり失禁した。
影のひとつはノロスという男。
弓使いでウルラと同い年の男。ゴウキに弓を射っていた男だった。
彼はゴウキに見えない建物の屋根の上から弓をつがえていた。
(眠れ!)
狙いを定め、矢を放つ。
大型の獣でも数秒で昏倒する強さの麻酔の効く薬が塗ってある矢であり、まともに当たらずとも掠っだだけで行動不能に出来るシロモノである。
だが、その矢は横っ飛びしたゴウキに容易く躱された。
「えっ」
ノロスは捉えたと確信していただけに、避けられたことに愕然とする。ゴウキがチラリとノロスを一瞥したが、すぐに目線は別のものに向けられる。
「あいつ、気付いてた!?」
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先程と違いゴウキの目の前にはウルラがいる。敵が目の前にいながら見えない位置から飛んで来る矢に反応してしまう、そんなゴウキにノロスは怯んだ。
そして一方でゴウキは、地上でもう一人の敵と戦っていた。
ゴウキに向かって戦斧を振り下ろそうとしているのはバルドーという大男。ゴウキよりも大柄なバルドーは、その剛腕で大熊も一撃で仕留めるほどの強力な一撃を戦斧で叩き込もうとしている。
当たれば大概の者は死んでしまいそうだが、ここで実際にゴウキを殺してしまうと困るのは占拠者達の方だ。問題が更に大事になるし、今度は憲兵も出てくるかもしれない。
だが、残念なことにバルドーは馬鹿だった。だから本気で戦斧で殺しにいった。
ノロスの射た矢に気を取られ、隙が生まれるはず。そこを狙えば、確実に仕留められるはずーー そう考えていた。
しかし現実は違った。
バルドーの振り下ろした戦斧を、なんとゴウキは拳で正面から迎え撃つ。
「え」
バルドーは呆けて動くことも出来なかった。
自分の自慢の戦斧が、目の前で粉々に砕け散ったからだ。
(こいつ、やべえ)
バルドーは頭が悪い。だが、このときばかりは躊躇わず殺しにいったこと自体は、本能的にゴウキを警戒したバルドーの勘が正しかったと言えるかもしれない。
なぜならそうまでしてかかったところで、傷すら満足につけられないからだ。
「ぶっ」
次の瞬間には、ゴウキの拳がバルドーの顔面に突っ込んだ。
タフが自慢のバルドーは、運が悪いことにその一撃で気を失うことはない。
「ちょっ、待てよ」
思わずバルドーが言ったはずのその言葉は、果たしてきちんと言葉に出来ていただろうか。ゴウキはバルドーの胸ぐらを掴み、ひたすらに拳を振るい続ける。
歯が折れ、鼻が潰れ、顎が砕かれてもゴウキは拳を止めない。
この場の誰かが回復魔法を使えるのなら、このダメージも回復させてしまう。そのときまたバルドーは襲ってくる…ゴウキはそう警戒していた。
だから、回復させられても脅威とならぬよう、ゴウキは徹底して心を折ることにしたのだ。
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