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ゴウキ・ファミリー

供述

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「どうしてあんなことをしたか・・・ですって?・・・どうしてでしょうね」


薄暗い部屋、まともな寝具もない留置所で連日寝泊まりしていたアンドレは、憔悴しきった顔で何度も何度も同じ質問を繰り返されていた。憲兵とて質問して返ってきた答えを覚えていないから何度も同じことを聞いているのではない。容疑者に同じ質問を繰り返して相手を憔悴させることで、やがて嘘で塗り固めていたものと違う本当の答えをぽろっと漏らすことがある、それを引き出すために取り調べの際には必ずやっていることだった。

どうして犯罪教唆などしたか、その質問についてアンドレは容疑をあっさり認めつつも、最初は「気まぐれ」と半笑いで答えていた。だが5日ほど経過した頃、その答えが変わったことに取り調べをしていた憲兵スコットは顔を顰めた。
「どうしてでしょうね」これまで普通に答えられていた質問に対し、アンドレは自分でもわからないといった返答をするようになったのだ。変な話だ、自分のことではないか。
ふざけているのか、それとも不貞腐れて取り調べに協力するのをやめたのか、いずれかだと思ったが、アンドレの表情からはそのような様子は伺えなかった。
そして取り調べ開始から一週間後、またも答えは変わった。


「恐らく、ああいった人達には導く者が必要なのだと、そう思ったからでしょうね」


アンドレはすっきりしたような表情で、朗らかにそう言った。


「導く?お前がか?」


アンドレは冒険者ギルドの1職員に過ぎない。そんな彼が冒険者を導こうと考えるなど、どういうことかスコットはまるで理解が出来なかった。


「半端者は半端者で、ごろつきまがいだろうと誰かが導いてやらなければいけないんですよ。それを怠ると、やがて大きな問題が生じることになるでしょう。けど彼らは半端者だから誰も相手にしてくれない。導くなんて以ての外・・・僕はどこかでそれに気付いたんですね。で、僭越ながら僕がそれをやろうかと・・・きっとそう考えたんだと思います」


自分のことなのに、まるで他人事のようにそう話すアンドレをスコットは怪訝な目で見つめた。


「わからないって顔してますね?けどいずれわかると思いますよ。あのギルドには・・・いや、この王都には僕みたいな人間が必要だったってことが。・・・結局、僕はヘマをこいて、挙句に導くはずの者を死に追いやった無能だったわけですがね」



結局取り調べが終わるそのときまでアンドレの言ったことは理解されなかったが、彼の言ったそれは彼なりの真実だった。留置所で心をすり減らし、無気力になった中で、唐突に気が付いた真理。

アンドレのその言葉があるいは正しかったのではないか?そう言われるようになるのは、それから少し先の話だった。
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