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ゴウキ・ファミリー
誤用・情けは人の為ならず
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バルジ王国は領土に複数あるダンジョンにあるアイテム、頭の種類を誇る魔物の討伐により得られる素材、これらを手にする冒険者を中心に経済が回っている世界有数の冒険者大国だ。世界中から冒険者が一攫千金や名声を目当てに押しかけるこの国では、冒険者同士の競争はどうしても過酷なものとなる。
そうなると当然ながら脱落者が現れる。冒険者として成功する者はほんの一握りであり、命を落とさないまでもその日を生きるので精いっぱいな冒険者は数多く存在する。そして、その日暮らしすらままならぬ脱落者ともいえる冒険者の数は更にその数倍は存在しているのが現実だ。
アンドレはその脱落者の中から、これだと思う人間から何人か見繕い、気まぐれで犯罪教唆をして金を稼がせ、上前を頂く副業に手を出してきた。
金に困る冒険者は金が稼げる、アンドレは自ら手を汚すことなく退屈しのぎをした上で金も手に入る、まさにウィンウィンだった。アンドレによる気まぐれで金を手に入れ、犯罪に手を染めながらも生き永らえた冒険者の数は多い。数が多ければ犯罪教唆をしているアンドレのリスクはその分跳ねあがるが、そこは「なんとなくこの人なら大丈夫だろう」という勘が働いた人のみを選んだせいか、これまでアンドレの副業が露見することはなかった。
アンドレの気まぐれに救われた冒険者は、冒険者として食っていくこともままならぬ半端者であったが、自分を救ってくれたアンドレに厚い恩義を感じる者が多くいた。
アンドレにしてみればほんのひと時の気まぐれの火遊びの相手。ゴルドーを代表とした数人は例外的なものであったが、基本的には一期一会の間柄。アンドレは職業柄一度相手した冒険者の顔は覚えているが、それだけ。思い入れがあるわけではないし、関わることもないと思っていた。
だが、アンドレの危機を聞きつけ、恩を返そうとする者がいた。
これがガルフを始めとした、かつてアンドレに救われた半端者の冒険者達である。
冒険者として脱落した半端者である故に、一流の冒険者として名の知れたゴウキやスミレに勝てるはずもない。だが、それでもアンドレを逃がすための時間稼ぎくらいにはなろうと、十を超える冒険者が今アンドレの元に集まっていた。
「そんな・・・そんなバカな」
アンドレは自分を救いに来てくれた冒険者達の姿を見て唖然とした。
小遣い稼ぎの種でしかなく、用が済んだり問題を起こしたりすれば切り捨てるだけの半グレどもと変わらないはずの存在。
だがそう思っていたのはアンドレだけだった。
遊びで半端に情けをかけただけのはずの相手は、本気でアンドレの窮地を救いに来たのだ。
「アンドレさん逃げてくれ!」
そう叫び、大金槌を振り回している大男が、ゴウキの浴びせ蹴りをくらって昏倒した。
「逃げろアンドレさん!」
ナイフを持ち、アンドレの近くにいるスミレに襲い掛かった男は、あっさりとスミレのクナイによって急所を突かれ、そのまま動かなくなる。
アンドレは自身の軽はずみな行動が、思いも寄らぬほど他人を巻き込んだことに恐れ慄いた。
アンドレはいつのまにか半端者達の救世主になってしまっていたことに、今の今になって本当の意味で気付いてしまった。
そうなると当然ながら脱落者が現れる。冒険者として成功する者はほんの一握りであり、命を落とさないまでもその日を生きるので精いっぱいな冒険者は数多く存在する。そして、その日暮らしすらままならぬ脱落者ともいえる冒険者の数は更にその数倍は存在しているのが現実だ。
アンドレはその脱落者の中から、これだと思う人間から何人か見繕い、気まぐれで犯罪教唆をして金を稼がせ、上前を頂く副業に手を出してきた。
金に困る冒険者は金が稼げる、アンドレは自ら手を汚すことなく退屈しのぎをした上で金も手に入る、まさにウィンウィンだった。アンドレによる気まぐれで金を手に入れ、犯罪に手を染めながらも生き永らえた冒険者の数は多い。数が多ければ犯罪教唆をしているアンドレのリスクはその分跳ねあがるが、そこは「なんとなくこの人なら大丈夫だろう」という勘が働いた人のみを選んだせいか、これまでアンドレの副業が露見することはなかった。
アンドレの気まぐれに救われた冒険者は、冒険者として食っていくこともままならぬ半端者であったが、自分を救ってくれたアンドレに厚い恩義を感じる者が多くいた。
アンドレにしてみればほんのひと時の気まぐれの火遊びの相手。ゴルドーを代表とした数人は例外的なものであったが、基本的には一期一会の間柄。アンドレは職業柄一度相手した冒険者の顔は覚えているが、それだけ。思い入れがあるわけではないし、関わることもないと思っていた。
だが、アンドレの危機を聞きつけ、恩を返そうとする者がいた。
これがガルフを始めとした、かつてアンドレに救われた半端者の冒険者達である。
冒険者として脱落した半端者である故に、一流の冒険者として名の知れたゴウキやスミレに勝てるはずもない。だが、それでもアンドレを逃がすための時間稼ぎくらいにはなろうと、十を超える冒険者が今アンドレの元に集まっていた。
「そんな・・・そんなバカな」
アンドレは自分を救いに来てくれた冒険者達の姿を見て唖然とした。
小遣い稼ぎの種でしかなく、用が済んだり問題を起こしたりすれば切り捨てるだけの半グレどもと変わらないはずの存在。
だがそう思っていたのはアンドレだけだった。
遊びで半端に情けをかけただけのはずの相手は、本気でアンドレの窮地を救いに来たのだ。
「アンドレさん逃げてくれ!」
そう叫び、大金槌を振り回している大男が、ゴウキの浴びせ蹴りをくらって昏倒した。
「逃げろアンドレさん!」
ナイフを持ち、アンドレの近くにいるスミレに襲い掛かった男は、あっさりとスミレのクナイによって急所を突かれ、そのまま動かなくなる。
アンドレは自身の軽はずみな行動が、思いも寄らぬほど他人を巻き込んだことに恐れ慄いた。
アンドレはいつのまにか半端者達の救世主になってしまっていたことに、今の今になって本当の意味で気付いてしまった。
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