『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

スミレ その2

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学園におけるスミレは良く笑い愛想が良く、弱味を見せない成績優秀な生徒という、完璧な人間を演じていた。だがゴウキはそんなスミレに常々違和感を抱いていたという。


「いつも無理してそうに見えたんでな」


スミレとゴウキがちゃんと話をするのはこの時が初めてであった。それまではただの同学年の生徒という印象しかなかったゴウキから、まさか自分の内心を見透かされることになるとはとスミレは愕然とした。祖国の両親からは忍者としては致命的なミスと教えられてきたからだ。そんなに自分はわかりやすく顔に出ていたのかと。

これを機にスミレはゴウキと接する機会が増えたが、徐々にゴウキのことがわかっていくうちに、自分のことを彼に知られたのは彼の勘が野性的なまでに鋭いからだということを察する。
ゴウキのセンスは凄いの一言に尽きた。五感がとにかく優れているのか、人知れぬスキルでも持っているのか、派手な能力があるわけではないがとにかく総合的に戦闘力の高い冒険者向けの人間だと思った。騎士になれば騎士の、冒険者になれば冒険者の頂点に昇り詰める人間だろう・・・そう確信があった。ゴウキの野性的勘の前では、偽りに着飾ったスミレなど丸裸も同然だろう。

いつしかスミレはゴウキと接するうちに、自分を偽らないようになっていた。
嫌なときは嫌、腹が立つときは腹が立つ、これまで世間体のために我慢していた自分をさらけ出すようになっていた。それまでのスミレを見ていた周囲の人間は驚いたが、ゴウキの前ではありのままの自分でいたい、そんな自分を見て欲しい、無意識のうちに抱いていたそんな欲求がスミレをそうさせた。いつしかゴウキに対する愛が芽生えていたのだ。
結果として口が悪く奔放なスミレが出来上がったが、これまで自分を押さえつけてきた反動が来たのかもしれない。



祖国の実家からはそんなスミレの様子が伝わっていたようで、学園を退学し即刻帰国せよとの命令を下されたものの、スミレはそれを拒否。元より成績優秀で特別奨学金を得られる立場だったため、その制度を利用して実家から勘当されても援助なしで学園を卒業することができた。
そして冒険者になってからは、難度の高いクエストをこなして高額報酬を得ることで祖国の実家にこれまで自分に使われた以上の金額を仕送りした。これで最低限の責任は果たしたと考えたスミレは、今後はゴウキとパーティーを組んでやっていきたいと願い、ゴウキがフリーになるのを待っていた。

世間体と親からの言いつけに雁字搦めになっていた自分を解き放ってくれたゴウキが、いつの間にかかつての自分と同じように縛られているのを見てもどかしく思っていたが、勇者クレアの自滅によりようやくゴウキは解放された。
スミレはもうゴウキを手放すつもりはなかった。
故に、ゴウキと一緒にいる時間を邪魔する者、ゴウキの前に立ちふさがる者は潰す。
今引きずっているゴルドーもそうだ。くだらないことでゴウキの手を煩わせないでほしい。彼はもっと評価され、高みに上がるべき人間なのだ。

スミレは元来の忍者らしさは表面上は既にない。かつての自分と決別するためにあえてそのようにしているのだ。
だが、奥底に眠る残忍さ、冷酷さは正しく忍者のそれであった。

「お前には地獄すら生ぬるい」


これからゴルドーには拷問が待っている。
これだけはゴウキにはあまり見せたくないという彼女の一面だった。
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