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ゴウキ・ファミリー
トリックだよ
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轟音を轟かせ、ゴルドーは全てを巻き込むかのような大爆発を遂げた。
あまりに使用用途が無いせいか、マイナー中のマイナーである自爆魔法『セルフ・ボム』。
スミレは危ないところでその爆発から逃れることが出来た。
「アブねぇアブねぇ」
まだ生きられる余地のある状態から自爆するようなクレイジーを相手したことの無かったスミレは、このときばかりは不意を突かれた形になった。
「あーあ、めんどくさ」
スミレは溜め息をついて、誰もいなくなった爆心地を一瞥してどこかへ走り出した。
ーーーーー
「はぁっ、はぁはぁ・・・!!」
暗い街路地をくねくねと軌道を変えながら走り進む男は、先ほど自爆魔法で爆発四散したはずのゴルドーだった。
体のどこも欠損していない、五体満足の姿で全力疾走をしている。
ただし服は着ていない。全裸だ。
ゴルドーは自爆魔法を使い、実際に爆発を起こしたように見えた。だが現実にはトリックがあった。
実はゴルドーの体には爆発耐性の護符が張られ、防御術式の描かれたタトゥーが入っていたのだ。
実際に爆発は起きたが、ゴルドーの体はそれら防爆対策により体そのものは四散することなく耐えている。
服と護符は吹き飛び、タトゥーを入れた皮膚は焦げ目がついているので、一度限り使えるだけのトリックである。ゴルドーは犯罪者として生きるようになってから、万が一のときに捕縛を逃れるために嘘の自爆による目くらましを編み出していた。彼は馬鹿だが保身に関しては少し知恵が回った。
ゴルドーは口でこそ「セルフ・ボム」を唱えたが、現実には彼にはその魔法を使うことはできない。自分に向けて爆発魔法を使っただけのことなのだ。
その身を挺した爆発魔法をもって、ゴルドー達を拘束していたスミレの糸は吹き飛んだ。糸から逃れたゴルドーは、爆発による煙に紛れて逃走したのだ。
ちなみに仲間達にも同じ防爆の対策がされているため、糸から解放された彼らもゴルドーと同じように逃走をしているはずだった。
「はぁ、はぁ・・・!まずったな・・・明日からしばらく身を隠さねば・・・」
そこそこの距離を稼いだだろうか。
ふと一安心したゴルドーは、息を整えながら民家の壁に手をついた。
「お前はまず先に隠すべきものがあるだろうが」
そんなゴルドーに、抑揚のない声が背後からかけられた。
「なっ・・・!?」
ゴルドーが振り向くと、そこにいたのはスミレだった。
先ほど相対したときは涼し気な表情をしていたが、今は怒りに顔を歪めていた。
「このアホンダラ。ゴウキを起こすなって言ったのに、あんな馬鹿でかい音させたんじゃ絶対起きちまってるだろうが・・・!」
苛立たし気に地面に唾を吐いたスミレは、ゆっくりとゴルドーに歩み寄る。
あまりの殺気にゴルドーは思わず「ヒッ」と声を洩らしてしまった。
「お前にゃ徹底的に地獄を見せてからボスのことを吐いてもらうから。祈れ、悪党」
スミレは拳をボキボキと鳴らしてゴルドーを冷たく見下ろしながらそう言った。
あまりに使用用途が無いせいか、マイナー中のマイナーである自爆魔法『セルフ・ボム』。
スミレは危ないところでその爆発から逃れることが出来た。
「アブねぇアブねぇ」
まだ生きられる余地のある状態から自爆するようなクレイジーを相手したことの無かったスミレは、このときばかりは不意を突かれた形になった。
「あーあ、めんどくさ」
スミレは溜め息をついて、誰もいなくなった爆心地を一瞥してどこかへ走り出した。
ーーーーー
「はぁっ、はぁはぁ・・・!!」
暗い街路地をくねくねと軌道を変えながら走り進む男は、先ほど自爆魔法で爆発四散したはずのゴルドーだった。
体のどこも欠損していない、五体満足の姿で全力疾走をしている。
ただし服は着ていない。全裸だ。
ゴルドーは自爆魔法を使い、実際に爆発を起こしたように見えた。だが現実にはトリックがあった。
実はゴルドーの体には爆発耐性の護符が張られ、防御術式の描かれたタトゥーが入っていたのだ。
実際に爆発は起きたが、ゴルドーの体はそれら防爆対策により体そのものは四散することなく耐えている。
服と護符は吹き飛び、タトゥーを入れた皮膚は焦げ目がついているので、一度限り使えるだけのトリックである。ゴルドーは犯罪者として生きるようになってから、万が一のときに捕縛を逃れるために嘘の自爆による目くらましを編み出していた。彼は馬鹿だが保身に関しては少し知恵が回った。
ゴルドーは口でこそ「セルフ・ボム」を唱えたが、現実には彼にはその魔法を使うことはできない。自分に向けて爆発魔法を使っただけのことなのだ。
その身を挺した爆発魔法をもって、ゴルドー達を拘束していたスミレの糸は吹き飛んだ。糸から逃れたゴルドーは、爆発による煙に紛れて逃走したのだ。
ちなみに仲間達にも同じ防爆の対策がされているため、糸から解放された彼らもゴルドーと同じように逃走をしているはずだった。
「はぁ、はぁ・・・!まずったな・・・明日からしばらく身を隠さねば・・・」
そこそこの距離を稼いだだろうか。
ふと一安心したゴルドーは、息を整えながら民家の壁に手をついた。
「お前はまず先に隠すべきものがあるだろうが」
そんなゴルドーに、抑揚のない声が背後からかけられた。
「なっ・・・!?」
ゴルドーが振り向くと、そこにいたのはスミレだった。
先ほど相対したときは涼し気な表情をしていたが、今は怒りに顔を歪めていた。
「このアホンダラ。ゴウキを起こすなって言ったのに、あんな馬鹿でかい音させたんじゃ絶対起きちまってるだろうが・・・!」
苛立たし気に地面に唾を吐いたスミレは、ゆっくりとゴルドーに歩み寄る。
あまりの殺気にゴルドーは思わず「ヒッ」と声を洩らしてしまった。
「お前にゃ徹底的に地獄を見せてからボスのことを吐いてもらうから。祈れ、悪党」
スミレは拳をボキボキと鳴らしてゴルドーを冷たく見下ろしながらそう言った。
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