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ゴウキ・ファミリー
セントラルギルドの異端者
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セントラルギルドは王都で最も規模の大きい冒険者ギルドだ。扱う金額も依頼の数も、王都の他の冒険者ギルドとは桁が違う。
そんなセントラルギルド職員ともなれば、王都では間違いなくエリートと呼ばれる人種となる。実際に優秀とされる人間が多かった。故に、セントラルギルドの職員には強い選民意識があった。
冒険者を相手にする仕事でありながら、冒険者を見下す。金になる優秀な冒険者には愛想を良くするが、内心では野蛮で肉体労働しか取り柄にない馬鹿だと思っていた。優秀ではない並の冒険者相手には表向きの愛想すら振りまかない。あくまで事務的に接するのみである。
そんなセントラルギルドの職員の中で異質な者といえば、まず元職員のノーラ。
彼女はギルドの闇に触れて追い出されてしまったが、在職時は冒険者の優劣に関わらず皆平等に愛想良くし、見下すようなこともしなかった。実際彼女は冒険者という人間を尊敬していたのだ。
そんなノーラはセントラルギルドでは異端であったが、そうした異端は実はもう一人だけいた。
「おぅオッサン、この書類整理しといてもらえる?俺、今日は約束があって定時で帰らないといけなくてさ、代わりに頼むよ」
ばさりと、十枚以上はある書類の束がある男のデスクの上に置かれた。
オッサンと呼ばれたこの男はアンドレ。30半ばでギルド勤めはそれなりに長いが、ギルド内でのカーストは新人と大差なく低い男であった。
「あぁ、わかった。やっておくよ」
アンドレはニコリと笑いそう応じると、仕事を頼んだ男は「サンキュー」とだけ言って去っていった。ちなみに10弱ほどアンドレの年下である。
「アンドレさん、こちらの書類も明後日までにお願いできますか?」
若い女子事務員がアンドレのところに書類を持ってくる。本来はアンドレが担当しないような書類だった。
「いいとも。置いておいてくれればやっておくよ」
アンドレの返事に、女はニンマリと笑って特に礼をいう事もなく自分のデスクに戻っていく。
女は昨年までは新人だったが、このギルドにおける力関係を理解し、今では大先輩であるアンドレに自分の仕事を押し付けるようになっていた。
「アンドレさん」
「はい、何でしょう」
「ちょっと困った冒険者が来てまして。応対してくださいますか?」
クレーマーか何かか、いずれにせよ手に余るのでアンドレに丸投げしないという女の職員がやってくる。面倒客の押し付け先としてもアンドレはギルド内で有名になっていた。
「あぁ、僕がやろう」
アンドレは穏やかに笑みを浮かべてそう答える。
「おい!早くしろいつまで待たせるんだ!!」
遠くのカウンターでクレーマーらしき冒険者の大声が聞こえる。
「はいはい、ただいま参ります」
ニコニコ、ニコッと笑みを浮かべたまま、アンドレは小走りで冒険者の応対をした。
虫も殺さぬようなこのうだつの上がらないギルド職員アンドレ。
彼こそが王都に巣くう半グレをまとめている男だとは、誰も知る由もない。
そんなセントラルギルド職員ともなれば、王都では間違いなくエリートと呼ばれる人種となる。実際に優秀とされる人間が多かった。故に、セントラルギルドの職員には強い選民意識があった。
冒険者を相手にする仕事でありながら、冒険者を見下す。金になる優秀な冒険者には愛想を良くするが、内心では野蛮で肉体労働しか取り柄にない馬鹿だと思っていた。優秀ではない並の冒険者相手には表向きの愛想すら振りまかない。あくまで事務的に接するのみである。
そんなセントラルギルドの職員の中で異質な者といえば、まず元職員のノーラ。
彼女はギルドの闇に触れて追い出されてしまったが、在職時は冒険者の優劣に関わらず皆平等に愛想良くし、見下すようなこともしなかった。実際彼女は冒険者という人間を尊敬していたのだ。
そんなノーラはセントラルギルドでは異端であったが、そうした異端は実はもう一人だけいた。
「おぅオッサン、この書類整理しといてもらえる?俺、今日は約束があって定時で帰らないといけなくてさ、代わりに頼むよ」
ばさりと、十枚以上はある書類の束がある男のデスクの上に置かれた。
オッサンと呼ばれたこの男はアンドレ。30半ばでギルド勤めはそれなりに長いが、ギルド内でのカーストは新人と大差なく低い男であった。
「あぁ、わかった。やっておくよ」
アンドレはニコリと笑いそう応じると、仕事を頼んだ男は「サンキュー」とだけ言って去っていった。ちなみに10弱ほどアンドレの年下である。
「アンドレさん、こちらの書類も明後日までにお願いできますか?」
若い女子事務員がアンドレのところに書類を持ってくる。本来はアンドレが担当しないような書類だった。
「いいとも。置いておいてくれればやっておくよ」
アンドレの返事に、女はニンマリと笑って特に礼をいう事もなく自分のデスクに戻っていく。
女は昨年までは新人だったが、このギルドにおける力関係を理解し、今では大先輩であるアンドレに自分の仕事を押し付けるようになっていた。
「アンドレさん」
「はい、何でしょう」
「ちょっと困った冒険者が来てまして。応対してくださいますか?」
クレーマーか何かか、いずれにせよ手に余るのでアンドレに丸投げしないという女の職員がやってくる。面倒客の押し付け先としてもアンドレはギルド内で有名になっていた。
「あぁ、僕がやろう」
アンドレは穏やかに笑みを浮かべてそう答える。
「おい!早くしろいつまで待たせるんだ!!」
遠くのカウンターでクレーマーらしき冒険者の大声が聞こえる。
「はいはい、ただいま参ります」
ニコニコ、ニコッと笑みを浮かべたまま、アンドレは小走りで冒険者の応対をした。
虫も殺さぬようなこのうだつの上がらないギルド職員アンドレ。
彼こそが王都に巣くう半グレをまとめている男だとは、誰も知る由もない。
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