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ゴウキ・ファミリー

仮初の平和

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王都の3区のとある酒場でのことだった。
仕事帰りの労働者が二人、そこそこ遅い時間まで飲んでいた。


「・・・いっけね、もうこんな時間だ」


時計を見て一人が言った。


「何言ってんだ!まだこんな時間だぜ」


「いやいや、あんま遅い時間に少人数でいるとゴロツキどもにカツアゲされるって話だろ?それに危ないクスリ売りなんかも出るって言うし、最近王都の治安悪すぎんよ~ 今からだとギリギリかな?早く帰らねぇと・・・」


「ちょい待ち。最近はすっかり減ったって話だぜそういうの」


「・・・そうなのか?」


「町にもたむろってたガラの悪いガキどもすっかり少なくなったよ。誰だか知らんが、片っ端からそういうの成敗してるらしいんだわ」


「鬼が大暴れして蹴散らしたって目撃者がいるらしいですよ」


二人の会話にグラスを磨いていたマスターがカウンター越しに割り込んだ。


「暴れたのは口の悪い女だって話だ」


隣で飲んでいた冒険者風の男も加わる。


「恐ろしく無口で淡々と刀を振るうって話よ・・・」


そこにウエイトレスも加わった。






「・・・これもうわかんねぇな」



ゴウキ達の清浄作戦は事情を知らぬ一般人には怪異のように語られていた。





ーーーーー




「にしても、だいぶ血祭に上げたけどさ。効果あるの?」


スミレは酒のつまみのチーズを啄んでゴウキに訊ねた。



今日も酒場「カムシン」ではゴウキ・ファミリーが集まって飲んでいた。
ここ数日はゴウキが提案した『半グレ狩り』に精を出すため、ここに集結してリノアの監視システムに半グレがひっかかるのを待ち、それを成敗するのが日課になっていた。
開始当初は一晩に十数件あった出動も、ここ数日になってグッと数が減った。呆れるほどに湧いてくるゴロツキの数にゴウキは最初絶句していたが、それでもある程度の数を締め上げるとゴウキの存在を横のつながりで知るのか、警戒してすっかり姿を隠してしまったのがチラホラいた。


「あるさ。すっかり出動回数も減ったろ?大人しくなったってことだ」


スミレの問いに、ゴウキは満足そうに頷いてビールをあおる。
ゴウキは酔わないので出動待機中とて酒を飲んでも問題ない。もっとも、ここにいる面子で酒を飲んだくらいで半グレに後れを取るような者は一人もいないのだが。


「けど、ビビッて姿隠しちまったら殲滅できなくね?」


姿を隠しているだけでほとぼりが冷めたらまた現れる・・・それではイタチごっこだ。


「いいんだよ。こうして手下を徹底的に潰してりゃ、そのうち大物が釣れるようになるさ」


ゴウキは半グレどもの成敗を続け、最終的に大元の取りまとめ役を引きずり出すつもりでいた。
「そんな単純な相手かぁ」とスミレは首を傾げるが、確かに相手はそう単純な相手ではなかった。

だが、その相手・・・半グレのボスにも予期せぬ出来事が起きようとしていたのである。
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