『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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ゴウキ・ファミリー

狩り

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深夜0時。
第2区の町の一角では泥酔した一人の男が歩いていた。


「ふぃぃ・・・飲み過ぎちまった」


身なりの良いこの熟年の男はとある商会の会長。この日は取引先の社長と付き合いで飲み交わし、今は愛人宅へ行こうとしているところだった。愛人宅へ行くので世間体もあるので秘書も同行させていない。
身なりの良い恰好をした男が深夜に一人で町を歩いていれば、それに狙いを定める野獣が時に現れる。


「ちょっと待ちなおっさん」


人気の無い路地で、会長は声をかけられた。
若い男の声だった。


「・・・ん?」


怪訝そうな顔で声のしたほうを振り向くと、そこには数人の若い男女が立っていた。年齢は15前後だろうか。会長は彼らを観察している間に、いつの間にか取り囲まれていることに気付く。


「い、一体何の用だ!?」


不穏な空気を察した会長は身構え、恫喝した。
恫喝されても目の前の若者たちはニヤニヤと笑うだけで怯む様子はない。この状況を頼んでいる感じすらあった。


「何の用?狩りだよ」


会長の問いに、若者の一人がそう答える。


「は?」


何を言っているのか理解できない会長が唖然としていると


「僕達お金が無いんだ。少しばかり恵んでくれないかな?」


若者たちの中で一人、抜きん出て背が高くガタイの良い男が前に出てそう言った。
ここにきてようやく会長は状況を理解した。狩り・・・つまり追いはぎか・・・こんな経験初めてのことだが、不用意なことをしたもんだと溜め息をつく。
若者たちはディックが追っていた「半グレ」達だった。こうして夜道を歩く無防備な金持ちに目を付け、追いはぎをして荒稼ぎをしている連中だ。


「今私が持っているのはこれだけだ。これで良いかね」


そう言って会長は懐から金貨の入った袋を取り出し、地面に放り投げた。


「あぁん?なんだその態度は。お前は人に金を渡すとき、地面に落としたものを拾わせるんかぁ?」


「な、なんだ!?」


会長の態度が気に入らなかったというガタイの良い男は、金を拾うでもなく会長の胸倉を掴む。


「ぐっ・・・!」


これまでに感じたこともない、暴力を目の当たりにし、会長は未知なる恐怖にすっかり怯んでしまう。


「決めた。金だけじゃ気が済まねぇ。ちょっと痛い目に遭ってもらおうかな?」


「えっ・・・なっ・・・おい・・・!」


ガタイの良い男がそう言って拳を握り締め、掲げたところだった。


「ぶべっ!?」


会長を拘束する手が解かれ、男は目の前から消えた。


「・・・え?」


ふと見ると、地面には今しがた会長の胸倉を掴んでいた男が倒れている。顔面からは血が流れており、体がピクピクと痙攣している。そしてこぶし大の岩がその横に転がっていた。


「お、おい!どうしたんだよ!!」


近くにいた男が倒れた男に駆け寄る。そしてすぐに会長に目を向け、先ほどと同じように彼の胸倉を掴んだ。


「てめぇ!何しやがった!?」


「ひ、ひぃっ!」


恫喝され、必死に目を瞑り次に来るだろう暴力に備える。
だが、そのまま数秒が経過しても何も起こらなかった。おそるおそる会長が目を開けると、今しがた自分の胸倉を掴んでいた男は、鼻から血を噴き出してそのまま倒れたのだった。


「え、ええ・・・?」


倒れた男は後頭部から血が出ており、また近くには先ほどと似たような大きさの岩が転がっている。


「それ以上は動かねぇほうがいいぞ。怪我したくなきゃな」


街灯の当たらない暗闇から声がする。会長は呆然としたままで、半グレ一同はザッと身構えた。


暗闇から姿を現したのはゴウキだった。こぶし大の岩を手に持ち掲げ、「こいつを投げるぞ」と脅すかのように半グレに見せつけている。


「な、なんだてめぇは!?」


一人がナイフを突きつけ叫んだ。
ゴウキは先ほどの半グレ達の言葉遣いを真似るように


「俺が何だって?狩りだよ」


そう言って不敵に笑った。
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