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ゴウキ・ファミリー
勇者パーティーはカモ
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「ゴウキさんですか?あぁ、彼はねぇ、いろいろと我々の仕事に言いがかりをつけることも多くてですね。以前はほら、勇者パーティーの一員でしたから我々も我慢していたけど、実際には困らされることが多かったんですよ」
急な王命を出されたクレア達は急遽遠征をすることになったのだが、その準備のためにセントラルギルドに来たクレアは、ギルド職員から世間話でゴウキの悪評を聞いていた。
ギルド職員はリフトの手がかかっていて、クレアにゴウキの悪評を吹き込むように頼まれてわざわざそんなことを話している。
「そうなんですか・・・」
善良な市民だと思っているギルド職員からそう言われ、クレアはショックで呆然とした。
以前からギルド職員とゴウキには軋轢があると話は聞いてはいたが、実際に当人から悪意隠さず言われると衝撃的であった。
「実際に損をさせられ泣かされたこともありましたよ。って、あぁ、これはクレア様には関係ありませんでしたね」
「いえ・・・」
まさかゴウキがそこまであこぎなことをしていたなんて。
彼もパーティーのために良かれと思って少し強引になってしまっていたのかもしれない。だがそのことでまさかギルドの人がこうまで心の痛めていたなんて・・・
クレアはゴウキのことを管理しきれなかったことを悔やんだ。
「申し訳ありません。今後はそのようなことは絶対にありませんので・・・!」
そう言って、クレアは頭を下げる。ギルド職員は朗らかな笑みを浮かべた。
「いえ、クレア様が謝られることではありません。まぁ、こちらもいろいろな手合いを相手にする商売ですので」
「そう言っていただけると」
ギルド職員が笑みを向けてくれるのでクレアはホッとする。
そこへ彼女らが話すカウンターの上に、横から別の職員がいくつかのポーションを持ってきた。
「横から失礼します。お時間取らせて申し訳ありません。こちらがご所望いただきましたハイポーションになります」
「はい。ありがとうございます」
クレアはギルドへハイポーションの購入のために訪れていた。これまでこうした回復役の買い出しはゴウキの役目であったが、これからはクレア達が分担して行わなければならない。
ゴウキはギルドでポーションを買い出しをすることはほとんどなかったが、リフトが「信頼できるところで買い出しをするべき」と言うので、今回はギルドへ買い出しをすることにしたのだ。だが
「・・・あれ?」
クレアはカウンターの上に置かれたハイポーションの小瓶の数を見て驚く。
予定していた数は10個だったが、今カウンターの上にあるのは8個だけだったのだ。
「あぁ、ハイポーションは今少し値上がりしていましてね。これまでと同じ金額ではそれだけの量しかご用意できないのですよ」
疑問に思っているクレアの内心を察して職員が言った。
値上げか、それは痛いなぁと思いつつ、クレアは納得する。そして追加料金を払い残り二個も購入した。
出費が嵩張っても必要分は揃えねばならない。仕方が無かった。
実際には原料となるスライムジェルの価格下落により、ポーション系の販売価格は従来と据え置きどころか下落傾向にあるのだが、市場に疎い上にギルド職員の言葉を疑わないクレアはそんなことには気付かない。
ギルド職員はゴウキと違い、疑うことなく自分達の言い分を信じるクレアをカモにして搾取しているのである。
この日、買い出しは種類に応じてパーティーメンバー皆が分担して行っていたが、誰もがクレアのようにカモにされる結果に終わっていた。だが、そのことには誰一人として気付いていない。
急な王命を出されたクレア達は急遽遠征をすることになったのだが、その準備のためにセントラルギルドに来たクレアは、ギルド職員から世間話でゴウキの悪評を聞いていた。
ギルド職員はリフトの手がかかっていて、クレアにゴウキの悪評を吹き込むように頼まれてわざわざそんなことを話している。
「そうなんですか・・・」
善良な市民だと思っているギルド職員からそう言われ、クレアはショックで呆然とした。
以前からギルド職員とゴウキには軋轢があると話は聞いてはいたが、実際に当人から悪意隠さず言われると衝撃的であった。
「実際に損をさせられ泣かされたこともありましたよ。って、あぁ、これはクレア様には関係ありませんでしたね」
「いえ・・・」
まさかゴウキがそこまであこぎなことをしていたなんて。
彼もパーティーのために良かれと思って少し強引になってしまっていたのかもしれない。だがそのことでまさかギルドの人がこうまで心の痛めていたなんて・・・
クレアはゴウキのことを管理しきれなかったことを悔やんだ。
「申し訳ありません。今後はそのようなことは絶対にありませんので・・・!」
そう言って、クレアは頭を下げる。ギルド職員は朗らかな笑みを浮かべた。
「いえ、クレア様が謝られることではありません。まぁ、こちらもいろいろな手合いを相手にする商売ですので」
「そう言っていただけると」
ギルド職員が笑みを向けてくれるのでクレアはホッとする。
そこへ彼女らが話すカウンターの上に、横から別の職員がいくつかのポーションを持ってきた。
「横から失礼します。お時間取らせて申し訳ありません。こちらがご所望いただきましたハイポーションになります」
「はい。ありがとうございます」
クレアはギルドへハイポーションの購入のために訪れていた。これまでこうした回復役の買い出しはゴウキの役目であったが、これからはクレア達が分担して行わなければならない。
ゴウキはギルドでポーションを買い出しをすることはほとんどなかったが、リフトが「信頼できるところで買い出しをするべき」と言うので、今回はギルドへ買い出しをすることにしたのだ。だが
「・・・あれ?」
クレアはカウンターの上に置かれたハイポーションの小瓶の数を見て驚く。
予定していた数は10個だったが、今カウンターの上にあるのは8個だけだったのだ。
「あぁ、ハイポーションは今少し値上がりしていましてね。これまでと同じ金額ではそれだけの量しかご用意できないのですよ」
疑問に思っているクレアの内心を察して職員が言った。
値上げか、それは痛いなぁと思いつつ、クレアは納得する。そして追加料金を払い残り二個も購入した。
出費が嵩張っても必要分は揃えねばならない。仕方が無かった。
実際には原料となるスライムジェルの価格下落により、ポーション系の販売価格は従来と据え置きどころか下落傾向にあるのだが、市場に疎い上にギルド職員の言葉を疑わないクレアはそんなことには気付かない。
ギルド職員はゴウキと違い、疑うことなく自分達の言い分を信じるクレアをカモにして搾取しているのである。
この日、買い出しは種類に応じてパーティーメンバー皆が分担して行っていたが、誰もがクレアのようにカモにされる結果に終わっていた。だが、そのことには誰一人として気付いていない。
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