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ゴウキ・ファミリー
常識派
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ゴウキはギルドに帰ることにし、ディックに別れを告げた。
「出来れば兄弟とは仕事がしたいな。今後ともよろしく頼むぜ」
別れ際、二人して拳を合わせる。
苦し紛れではあったが、それでも昔つるんでいた仲間を通じてセントラルギルドの包囲網を突破できそうなことにゴウキは安堵していた。
以前勇者パーティーにいたときなら身分差別の激しいリフトがディックとの協力関係なんて拒否していただろう。だが今は自由で縛られることはない。
細かなことだが、こんな当たり前のことに感動することにゴウキは自分で驚く。なんと身軽なことかと。
「ギルドに話しておくよ」
とはいえ最終的にはフォースギルドの、セシルの判断次第だ。セシルが4区の住民と仕事をしたくないと考えるタイプの人間ならこの話はここまでだからだ。恐らく、その心配は杞憂に終わると思うが・・・
「ところで、捕まえた半グレ達はどうするんだ?」
去り際、特に意味は無かったがゴウキは聞いた。
「まぁ、せいぜい見せしめになってもらうかな?縄張りで好き放題やって来られたわけだしなぁ」
ディックは特に詳細は語らなかったが、半グレ達はろくなことにならないのだなというのだけ察する。
人情派のクレアならここで情けをかけてやってくれなどと言うのだろうが、ゴウキは言わない。4区では4区のルールがある。ディックは秩序を守るために鬼になるのだから、ゴウキが口を出すこともないと思った。
ーーーーー
ゴウキがセントラルギルドに戻ると、そこには既にスミレ達ゴウキ・ファミリーの面々が揃っていた。
「うわっ酒くさっ!お前昼間から飲んできたのかよゴウキ!」
顔は素面だが、思いっきりアルコールの匂いを漂わせながら戻ってきたゴウキを見て、スミレは呆れてみせる。
ゴウキの体質的に体はアルコールを吸収してもすぐに分解する。だから酔いこそ長くは続かないが、匂いまでは分解しないので昼間から酒をしこたま飲んだことはバレバレなのだ。
「すまん、旧友に会ってな。だが、お陰で収穫はあったぞ」
ゴウキはスミレの反応にたじたじになりながらも、どうにかフォースギルドの取引先が見つかりそうなことを告げた。しかしスミレの表情は変わらない。
「そんなのこっちだって見つけたっての」
「え?」
難しいと思っていた取引先の開拓を縁とはいえ早速達成したことを驚かれると思ったゴウキは、スミレの冷めたリアクションに逆に驚くことになった。
「6軒ほど取引してくれる商店見つけた。最初は断られたけど、裏帳簿とかご禁制の商品の取り扱いとかそういう弱みをちらつかせたら取引に応じてくれたわ」
いつものように何でもないようにスミレは言った。どうやって?と聞いても「忍者だからこれくらいは」程度のことが返ってくるんだろうと思ってゴウキは聞かなかった。
「私は3軒だけ見つけました」
スミレの半分しか見つけられなかったことが悔しいのか、どこか申し訳なさそうにリノアが言う。ゴウキはもう驚かないことに決めた。
「こちらも最初は断られましたけど、何とか説得系の魔法を使って交渉を成功させました」
説得系の魔法・・・それはもしや精神操作系の魔法では?とゴウキは冷や汗が噴出した。
魔法は専門外のゴウキでも知っている。精神操作系の魔法は既に失われた魔法と言われるものであるが、その理由は人々を混乱に陥れ、傾国亡国の元になる魔法として使用を禁じられ、使用した者は悉く処刑断罪されて使用できる者が絶滅したからである。
既に精神操作系の魔法は使い手がいなくなったとされる現代においても、それを使用した者は極刑と法が定めている。
ゴウキは面倒が起こりそうなのでそれについてはリノアに今聞くことはやめた。だが今後は使用を禁止しておいたほうが良さそうだと思った。
「俺は・・・すまない、交渉すら出来なかった」
沈痛な面持ちでデニスが口を開いた。
他人と話すことが極端に苦手なデニスは、交渉に赴いたもののろくに話すことが出来ずに失敗に終わったらしい。
普通に他人と話すことさえ苦手なデニスに、アウェーといえる場での交渉はどれだけ気合を入れても難しい。結局ろくに話すことも出来ないまま交渉しようとした店内で吐いてしまって終わりだったと言う。
「情けない・・・!かくなる上は、俺が剣を修行した国にあるセップクという責任の取り方を・・・」
ゴウキは神妙な顔で刀に手をかけるデニスの両肩に手を置いた。
「いいよ。デニスはそのまま(比較的)まともなままでいてくれ・・・」
とんでもな女二人から見れば、デニスはゴウキから見て救いとも言える常識派だと思った。
「出来れば兄弟とは仕事がしたいな。今後ともよろしく頼むぜ」
別れ際、二人して拳を合わせる。
苦し紛れではあったが、それでも昔つるんでいた仲間を通じてセントラルギルドの包囲網を突破できそうなことにゴウキは安堵していた。
以前勇者パーティーにいたときなら身分差別の激しいリフトがディックとの協力関係なんて拒否していただろう。だが今は自由で縛られることはない。
細かなことだが、こんな当たり前のことに感動することにゴウキは自分で驚く。なんと身軽なことかと。
「ギルドに話しておくよ」
とはいえ最終的にはフォースギルドの、セシルの判断次第だ。セシルが4区の住民と仕事をしたくないと考えるタイプの人間ならこの話はここまでだからだ。恐らく、その心配は杞憂に終わると思うが・・・
「ところで、捕まえた半グレ達はどうするんだ?」
去り際、特に意味は無かったがゴウキは聞いた。
「まぁ、せいぜい見せしめになってもらうかな?縄張りで好き放題やって来られたわけだしなぁ」
ディックは特に詳細は語らなかったが、半グレ達はろくなことにならないのだなというのだけ察する。
人情派のクレアならここで情けをかけてやってくれなどと言うのだろうが、ゴウキは言わない。4区では4区のルールがある。ディックは秩序を守るために鬼になるのだから、ゴウキが口を出すこともないと思った。
ーーーーー
ゴウキがセントラルギルドに戻ると、そこには既にスミレ達ゴウキ・ファミリーの面々が揃っていた。
「うわっ酒くさっ!お前昼間から飲んできたのかよゴウキ!」
顔は素面だが、思いっきりアルコールの匂いを漂わせながら戻ってきたゴウキを見て、スミレは呆れてみせる。
ゴウキの体質的に体はアルコールを吸収してもすぐに分解する。だから酔いこそ長くは続かないが、匂いまでは分解しないので昼間から酒をしこたま飲んだことはバレバレなのだ。
「すまん、旧友に会ってな。だが、お陰で収穫はあったぞ」
ゴウキはスミレの反応にたじたじになりながらも、どうにかフォースギルドの取引先が見つかりそうなことを告げた。しかしスミレの表情は変わらない。
「そんなのこっちだって見つけたっての」
「え?」
難しいと思っていた取引先の開拓を縁とはいえ早速達成したことを驚かれると思ったゴウキは、スミレの冷めたリアクションに逆に驚くことになった。
「6軒ほど取引してくれる商店見つけた。最初は断られたけど、裏帳簿とかご禁制の商品の取り扱いとかそういう弱みをちらつかせたら取引に応じてくれたわ」
いつものように何でもないようにスミレは言った。どうやって?と聞いても「忍者だからこれくらいは」程度のことが返ってくるんだろうと思ってゴウキは聞かなかった。
「私は3軒だけ見つけました」
スミレの半分しか見つけられなかったことが悔しいのか、どこか申し訳なさそうにリノアが言う。ゴウキはもう驚かないことに決めた。
「こちらも最初は断られましたけど、何とか説得系の魔法を使って交渉を成功させました」
説得系の魔法・・・それはもしや精神操作系の魔法では?とゴウキは冷や汗が噴出した。
魔法は専門外のゴウキでも知っている。精神操作系の魔法は既に失われた魔法と言われるものであるが、その理由は人々を混乱に陥れ、傾国亡国の元になる魔法として使用を禁じられ、使用した者は悉く処刑断罪されて使用できる者が絶滅したからである。
既に精神操作系の魔法は使い手がいなくなったとされる現代においても、それを使用した者は極刑と法が定めている。
ゴウキは面倒が起こりそうなのでそれについてはリノアに今聞くことはやめた。だが今後は使用を禁止しておいたほうが良さそうだと思った。
「俺は・・・すまない、交渉すら出来なかった」
沈痛な面持ちでデニスが口を開いた。
他人と話すことが極端に苦手なデニスは、交渉に赴いたもののろくに話すことが出来ずに失敗に終わったらしい。
普通に他人と話すことさえ苦手なデニスに、アウェーといえる場での交渉はどれだけ気合を入れても難しい。結局ろくに話すことも出来ないまま交渉しようとした店内で吐いてしまって終わりだったと言う。
「情けない・・・!かくなる上は、俺が剣を修行した国にあるセップクという責任の取り方を・・・」
ゴウキは神妙な顔で刀に手をかけるデニスの両肩に手を置いた。
「いいよ。デニスはそのまま(比較的)まともなままでいてくれ・・・」
とんでもな女二人から見れば、デニスはゴウキから見て救いとも言える常識派だと思った。
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