上 下
122 / 494
ゴウキ・ファミリー

あまりに予想外

しおりを挟む
「追いはぎするにしてもよ、お前らいくら何でも段取り悪すぎねぇか?」


ゴウキはそう言って服の胸ポケットから煙草の箱を取りだし、一本咥えて火を着ける。


「あ?何言ってんだお前?一人でイキってハッタリか?」


リーダー男が笑う。
それを見てゴウキはまた大きく溜め息をついた。


「あのさ、こんな白昼堂々に顔を隠さずに人がいるところで追いはぎなんて、馬鹿がやることだとわからねぇか?」


そう言ってゴウキは路肩で寝そべっている浮浪者を顎で示す。


「もう少し先に行けばもっと人気の無いところがあるのによ。浮浪者だったら目撃者のうちに入らねぇとでも思ったか?事件の通報は小銭だが恩賞が出るから、浮浪者はすぐ通報するぜ。こういうの馬鹿だからわからねぇか?」


「・・・あぁ?」


気まずさを誤魔化すためなのか、リーダー男は怒りで顔を歪ませる。


「あとさ、さっきから俺ずっと隙だらけだぜ?問答無用で襲って身ぐるみ剥いでもいいくらいなのに、どうしてさっきからぼけっと話なんかしてんだ?なぁ、お前なんか今の隙に攻撃魔法の詠唱とか出来たんじゃねぇの?」


ゴウキに指を指された黒魔法士の女はビクッと肩を震わせる。


「なぁ、ここまで教えてやってるのに、どうして何もしてこないんだ?本当は怖くて戦いたくないから話し合いで終わらせたかったのか?」


ぷはぁーっとわざと音を立てて煙草の煙を吐き出すゴウキ。煙草の煙がリーダー男にかかる。
リーダー男は怒りでプルプルと震えていた。


「で、お前らなんなんだよ。ただ俺と話したかっただけか?」




リーダー男は少しの間俯いたあと


「・・・もういいわ、やっぱ殺すわ」


据わった目で呟くようにそう言った。そんなリーダー男を見て


「え、やるのか?金だけって話じゃなかったか?」


大男は少しばかり焦ったように言う。それを見ながらゴウキは煙草を地面に落とし、靴で火を踏み消した。


「で、やるのかやらねーのか。いつまで待ってりゃいいんだ?もう一本吸う時間貰えるのか?それとも殺すってのは口だけか?」


呆れたように言うゴウキにリーダー男が激昂する。


「やってやらぁ!」


リーダー男の叫びに反応し、大男も身構える。黒魔法士も詠唱を開始する。白魔法士はただ成り行きを見守っていた。
未熟ーー 冒険者としても強盗団としてもあまりにも未熟。
連携も何もない、ただ各々が思い思いに戦うだけの集団。それで能力が高いならいざ知らず、動きはてんで素人で死ぬほど遅い。だが殺すと言われた以上、ゴウキは手加減するつもりはない。


ズンッ


リーダー男の腹がゴウキのフックで潰れる。くの字に屈んだ体制のまま、リーダー男は後方に吹き飛び悶絶して転がりまわる。
大男は大剣を振り上げようとするが、その動作を終える間もなく顔面がゴウキの拳によって潰された。顔面を窪ませ、膝をついてそのまま動かなくなる。
その様子を見ていた黒魔法士は、恐怖のあまり詠唱をやめてペタリと座り込んだ。ついでに失禁している。それは白魔法士の男も同じだった。


(な、なんだぁ?この馬鹿みてぇに弱い奴らは・・・)


強盗団のあまりの弱さに、ゴウキは呆れかえった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

たった1度の過ち

恋愛 / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:27

マッチョな俺に抱かれる小さい彼女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:67

あなたにはもう何も奪わせない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:51,607pt お気に入り:3,387

決して戻らない記憶

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:95

アドレナリンと感覚麻酔

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:126

獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,970pt お気に入り:1,255

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:7

聖女の幼馴染は逃亡したいそうです。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:4

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,178pt お気に入り:1,634

処理中です...