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追放後
淡い希望
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幾つもの不幸が重なり、自分の想定し得ない事態が起こり、クレアの心は大いに乱された。実際にはリフトの謀略なのだが、そうであるとはクレアが気付くはずもない。
目が覚めたら夢で、全部が無かったことになればーー そんな希望を胸に床に着いたが、目が覚めても現実は何一つ変わりはしなかった。
そして一縷の望みを胸にセントラルギルドに出向き、クレアは今回の脱退処分騒動における真相を聞くことになる。
「調べたところ、当ギルドの職員による勘違いによるミスであるということが発覚しました」
応対したのは昨日と同じ係長だった。
「一時脱退処分の申請を、聞き違えて脱退処分申請と勘違いしてしまったようです。なにぶん、通常ほとんどない手続きなので、職員のほうも少し混乱してしまったようでして」
係長が言うように、一時脱退処分というのは滅多に下されるような処分ではなかった。身内のゴタゴタに対し、第三者であるギルドを関わらせるこの処分は、言うなれば身内の恥を晒す行為になる。なので通常よっぽどのことがないとこの処分が下されることはないし、ギルドもこれについて手続きをすることがないのである。
「勘違い・・・?けど、脱退処分にはパーティーの過半数以上の同意が必要なんじゃ・・・」
クレアが一縷の望みにした点、それはここだった。
脱退処分で手続きがなされたとしても、それにはパーティーの過半数以上の同意を取らなければならないという手順が存在する。
ギルドに申請に行ったリフトとマリスが同意したことになっているとしても、あと一人同意しなければ申請が通らない。そこにギルド側の手続きの不備として追及する余地があるか、あるいはそもそも脱退処分が為されているということ自体が勘違いではないかとクレアは考えていた。
「職員が言うには、申請に来たリフトさん、マリスさん、そして委任状にクレアさんの名前があった時点で3人の同意があったものと判断したようです。まぁ、そう取れなくもないですからねぇ」
「えっ・・・?」
クレアは寝耳に水とばかりに唖然とする。
一時脱退処分にはリーダーが届けるか、無理ならリーダーの委任状を用いて手続きをする必要がある。そのためにリフトに持たせた委任状が、まさか自分の同意として取られるなんて。だが、言われてみれば職員がそう取るのも仕方がないのか?いや、だが!
「で、でも勘違いとわかったなら、すぐにそれを撤回して・・・!」
「それは難しいですね・・・」
食い下がるクレアに、係長は淡々と述べる。
「職員の不手際とはいえ、既に手続きはなされてしまっていますし、申請に来たリフトさん達の確認不十分というのもありますので撤回は難しい。それに、当ギルドでの処理を撤回したとしても、王城のほうでもすでに承認されてしまっていますので、そちらの撤回はほぼほぼ絶望的では?」
クレアは係長の言葉を聞き、カッと目を見開く。
王城!そうだ、王城の方で承認されてしまっているなら、恥を忍んで国王陛下に頭を下げればどうにかなるのではないか。クレアは苦しい中にも、ここに活路を見出した。
「問題を起こした職員は、既に昨日付けで懲戒免職にしてあります。信用を損なう行為ですからね」
「そう・・・ですか」
思うところはあるが、職員が職を失ったのであればこれ以上は言うまい。それに係長の言うように、確認を怠ったリフト達にも問題がある。
そんなことより、すぐにでも王に謁見を申し込まねば・・・
王城での手続きさえなんとか撤回できれば、ギルドの方も何とかなるだろう。そう淡い希望を胸に抱いていた。
目が覚めたら夢で、全部が無かったことになればーー そんな希望を胸に床に着いたが、目が覚めても現実は何一つ変わりはしなかった。
そして一縷の望みを胸にセントラルギルドに出向き、クレアは今回の脱退処分騒動における真相を聞くことになる。
「調べたところ、当ギルドの職員による勘違いによるミスであるということが発覚しました」
応対したのは昨日と同じ係長だった。
「一時脱退処分の申請を、聞き違えて脱退処分申請と勘違いしてしまったようです。なにぶん、通常ほとんどない手続きなので、職員のほうも少し混乱してしまったようでして」
係長が言うように、一時脱退処分というのは滅多に下されるような処分ではなかった。身内のゴタゴタに対し、第三者であるギルドを関わらせるこの処分は、言うなれば身内の恥を晒す行為になる。なので通常よっぽどのことがないとこの処分が下されることはないし、ギルドもこれについて手続きをすることがないのである。
「勘違い・・・?けど、脱退処分にはパーティーの過半数以上の同意が必要なんじゃ・・・」
クレアが一縷の望みにした点、それはここだった。
脱退処分で手続きがなされたとしても、それにはパーティーの過半数以上の同意を取らなければならないという手順が存在する。
ギルドに申請に行ったリフトとマリスが同意したことになっているとしても、あと一人同意しなければ申請が通らない。そこにギルド側の手続きの不備として追及する余地があるか、あるいはそもそも脱退処分が為されているということ自体が勘違いではないかとクレアは考えていた。
「職員が言うには、申請に来たリフトさん、マリスさん、そして委任状にクレアさんの名前があった時点で3人の同意があったものと判断したようです。まぁ、そう取れなくもないですからねぇ」
「えっ・・・?」
クレアは寝耳に水とばかりに唖然とする。
一時脱退処分にはリーダーが届けるか、無理ならリーダーの委任状を用いて手続きをする必要がある。そのためにリフトに持たせた委任状が、まさか自分の同意として取られるなんて。だが、言われてみれば職員がそう取るのも仕方がないのか?いや、だが!
「で、でも勘違いとわかったなら、すぐにそれを撤回して・・・!」
「それは難しいですね・・・」
食い下がるクレアに、係長は淡々と述べる。
「職員の不手際とはいえ、既に手続きはなされてしまっていますし、申請に来たリフトさん達の確認不十分というのもありますので撤回は難しい。それに、当ギルドでの処理を撤回したとしても、王城のほうでもすでに承認されてしまっていますので、そちらの撤回はほぼほぼ絶望的では?」
クレアは係長の言葉を聞き、カッと目を見開く。
王城!そうだ、王城の方で承認されてしまっているなら、恥を忍んで国王陛下に頭を下げればどうにかなるのではないか。クレアは苦しい中にも、ここに活路を見出した。
「問題を起こした職員は、既に昨日付けで懲戒免職にしてあります。信用を損なう行為ですからね」
「そう・・・ですか」
思うところはあるが、職員が職を失ったのであればこれ以上は言うまい。それに係長の言うように、確認を怠ったリフト達にも問題がある。
そんなことより、すぐにでも王に謁見を申し込まねば・・・
王城での手続きさえなんとか撤回できれば、ギルドの方も何とかなるだろう。そう淡い希望を胸に抱いていた。
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