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追放後

ハードラック

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ゴウキが部屋を引き払ったことを受け、クレアは最悪の事態になったと戦慄した。
勇者パーティーから追放されたと勘違いしたからか?いや、ギルドが言うには手続き自体は脱退・・・追放処分そのものだったというのだから、ある意味勘違いしているのはクレアの方と言える。

一時脱退処分は冒険者活動を停止させられるが、第1区の居住権まで取られることはない。あくまで脱退処分の手前・・・仮処分なのだから。
だが、脱退処分となると勇者パーティーであるからという理由で第1区に居住できたゴウキは、直ちに1区を出て行かねばならなくなる。だから出て行ったのだろうとクレアは想像した。
不可抗力で部屋を追い出されたのならば、それはゴウキにとって本意ではなく、今でも自分のことをどこかで待っているのかもしれない・・・クレアはそう考える。やはりきっと勘違いをしておらず、今でもきっと自分を信じてくれている・・・。

随分と都合の良い想像であるのはクレアも自覚していたが、今はその可能性に彼女は縋っていた。
踵を返し、パーティーの拠点へと走りだす。1区の居住権を失っても、外から手紙を送ることくらいは誰にでもできる。もしかしたら拠点にゴウキが手紙を送っているかもしれない、そう考えたのだ。


「クレア!」


拠点に辿り着くと、玄関でミリアが待っていた。
彼女はクレアの姿を見つけるなり、悲壮な声で名を呼び、駆け付けてくる。


「どうしたの?」


様子のおかしいミリアに、クレアは嫌な予感がした。ミリアは手に何かを持っている。それは見覚えのある封筒だった。


「これ、前にゴウキに向けてクレアが出したあの手紙・・・」


クレアの視線に気付き、ミリアが手に持っていた封筒を掲げる。


「どうしてここに・・・?」


ゴウキに送った手紙だ。ここにあるのはおかしい。クレアはもう頭の中が真っ白になりそうだった。


「宛先不明で返ってきたみたいなの・・・。調べたら、郵便局のほうで配送ミスがあって、最初に全然違うところに行っちゃってたみたいで・・・」


「え・・・?」


クレアはミリアの言った言葉の意味が最初理解出来なかった。


「それで数日遅れで正しい住所・・・ゴウキのところへ送られた時には、既にゴウキは部屋を引き払ってたみたい・・・」


「・・・何それ?」


動悸がする。
クレアの冷や汗が止まらない。
努めて冷静に事実を整理する。

ゴウキはクレアが宛てた手紙を読んでいない。

ギルドは一時脱退処分ではなく、脱退処分の手続きを進め、終えている。

その手続きは王城へ送られ、そこでも完了している。

つまりゴウキは現段階で既に勇者パーティーではない。

そして何より・・・クレアがゴウキを追放したと思っている。


「そんな・・・そんなバカなこと・・・」


クレアは突然自分の足元が崩れ出したかのような、そんな感覚に陥っていた。
こんな手違いが重なる不幸って、こんなこと普通ある?
思わず乾いた笑いがクレアから洩れた。
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