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追放後

勇者の間違い

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「ゴウキに一時脱退処分という重い罰を与えることで、今回迷惑をかけた皆さまへ誠意を見せることが出来ると思います」


クレアの決断に対し、マリスも同意する。
ミリアもそれを聞いて鎮痛な表情を浮かべつつも頷いていた。この瞬間、ゴウキの一時脱退処分が確定する。
謹慎のような内々だけで済むような罰では周囲は納得しない。一時脱退処分という、ギルドの経歴に傷として残るような、わかりやすい罰を与えなければならない。
クレアもミリアも己にそう言い聞かせ、自身を納得させる。
本来ならばここまでせずとも国王が外遊中でなければなぁなぁで済ませてくれたかもしれないのだが、こればかりは仕方がない。タイミングが悪かったのだ。


「では、今日これからセントラルギルドに赴いて手続きをしてくるわ・・・」


憔悴した表情でクレアは呟くように言った。
本意ではないことだが、それでもこの処分にはパーティーのリーダーによる手続きが必要だったので、どうしても冒険者ギルドへ行かねばならなかった。


「あぁ、その事なんだがクレア。実はバーレン侯爵から緊急の依頼があると連絡があったんだ。直接クレアと話がしたいそうだから、すぐに行って欲しいんだ」


「えっ?」


リフトに言われてクレアはキョトンとした。
バーレン侯爵は勇者パーティーの後ろ盾になってくれている人だ。必要なときに所有している船や馬車などの移動手段を貸し出してくれる頭の上がらない存在であるのだが、いつもは用件があるときにクレア本人を名指しして呼び出すようなことはしない。


「私が・・・?でも・・・」


クレアは戸惑う。セントラルギルドに行って手続きをしなければならないというのに、世話になっているバーレン侯爵からの呼び出しを無碍にすることもできない。セントラルギルドでの手続きそのものはそこまで時間がかかるものではないが、もしもギルドが混雑していたら順番待ちで時間がかかってしまう。


「セントラルギルドへは、僕が行ってこよう」


そんな悩み揺れているクレアにリフトが提案した。


「リフトが?でも・・・」


基本的には一時脱退処分などの重大案件の申請は、リーダーが行かなければ出来ない手続きだ。


「クレアの委任状があれば代理の僕でも大丈夫だ。どのみちギルドに少し用事があるしね」


「私も行きます。用事があるので」


リフトに続いてマリスも言い出すと、クレアは「なら任せるわ」と言って彼らに甘えることにした。
実のところ、ゴウキに対して処分を下すことに後ろめたい気持ちがあったので、自らの手で申請手続きをすることに対して躊躇しているところはあったのだ。リーダー失格ではあるという自覚はあったが、それでもタイミング的にそうなってしまったとはいえ、リフト達が代行してくれるということにクレアは少し内心ホッとしていた。

これが、クレアの痛恨の間違いの一つだった。

そしてリフトの裏切りの一つである。
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