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追放後
戻ってこい
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「ふぁ……ああ、良く寝た」
ベッドから身を起こしたゴウキは、大きく伸びをした。
ゴウキが寝ていた部屋は前にも厄介になったフォースギルドの一室。「これからうちで活躍してもらう期待の星だ。自由に使ってくれや」とセシルに言われて、とりあえず仮の宿として好意に甘えていた。
「そろそろ住まいをちゃんと決めないとな」
流石にこのまま厄介になり続けるわけにはいかない。間借りしている分際で部屋に煙草の臭いをつけることになってしまうし……などと考えているそばからゴウキは煙草をくわえて火をつける。
ゴウキがフォースギルドに宝物の換金を頼んでから一週間が経過しようとしていた。セシルの言った約束の換金の期限がやってくる。首尾良く金が入ってくれば、その額はスミレ達と均等に分け合っても、部屋を借りるどころか家を買うことが出来るだろう大金だ。
「何とかやっていけそうだな…」
ゴウキは安堵の溜め息をつく。
冒険者資格が凍結され、一時はどうなることかと思ったが、どうにか冒険者として身を立てられそうだなとホッとした。
実際には身を立てるどころか冒険者業界で大業を成し遂げる勢いなのだが、当のゴウキはその自覚がまだ無かった。
「もう昼前か…」
ゴウキが部屋から出ると、ギルドはとっくに営業を開始しているようだった。
ちなみにゴウキ・ファミリーは今回の換金が終えるまでダンジョンアタックは中止しているので、特に冒険者らしい活動をしていない。とりあえず今回の清算が終わるまでは新たに金のやり取りが発生するようなことはやめておこうというゴウキの判断からだった。
「あっ…ゴウキさん…」
カウンターにいるノーラがゴウキの姿を見つけると、なんとも微妙な表情を浮かべた。いつもなら「おそようございますゴウキさん!」などと言って満面の笑顔を向けてくるのだが…?と違和感にゴウキは首を傾げる。
しかし原因らしきものはすぐにわかった。
「やっと来ましたか!」
ノーラとカウンター越しに対面していた男が、ゴウキの姿を見つけるなり叫んだ。どうやらゴウキのことを待ちわびていたようである。
「私は、セントラルギルドの者です。ゴウキ様にお伝えせねばならぬことがあります故、探しておりました」
セントラルギルドの職員の服装をしている男を見て、ゴウキは怪訝な顔をする。セントラルが今更何の用だと疑問が沸いていた。
「お喜び下さい。まず第一にゴウキ様の冒険者資格の凍結が解除されました」
「あっそ」
ギルド職員の満面の作り笑いはゴウキの塩対応によってピクッ…と、若干崩れた。
「つきましては、ゴウキ様には当ギルドの専属冒険者として厚待遇で戻ってきて頂きたく…」
「帰りな」
顔をひきつらせながらも、尚も語ろうとするギルド職員の言葉をゴウキは遮る。
「あの…」
「話はそれだけか?なら帰りな」
とりつく島もないゴウキの態度に、ギルド職員は困惑する。
「いや、ゴウキさんね…冒険者としてやっていくなら、ウチ以上に良いところはないんですよ?」
馬鹿でもわかるように、とギルド職員は丁寧に説明するが、それでもゴウキは聞く耳を持たない。
「フォースギルドでやっていけそうだから、もし困ったらで頼むわ」
心にもないことを言って、適当な話を終わらせるゴウキに、ギルド職員は怒りに肩を震わせる。
「そうですか…ボスに伝えておきます。いずれどういうことになるかわかるでしょう」
捨て台詞をはいてギルド職員は帰っていった。
ベッドから身を起こしたゴウキは、大きく伸びをした。
ゴウキが寝ていた部屋は前にも厄介になったフォースギルドの一室。「これからうちで活躍してもらう期待の星だ。自由に使ってくれや」とセシルに言われて、とりあえず仮の宿として好意に甘えていた。
「そろそろ住まいをちゃんと決めないとな」
流石にこのまま厄介になり続けるわけにはいかない。間借りしている分際で部屋に煙草の臭いをつけることになってしまうし……などと考えているそばからゴウキは煙草をくわえて火をつける。
ゴウキがフォースギルドに宝物の換金を頼んでから一週間が経過しようとしていた。セシルの言った約束の換金の期限がやってくる。首尾良く金が入ってくれば、その額はスミレ達と均等に分け合っても、部屋を借りるどころか家を買うことが出来るだろう大金だ。
「何とかやっていけそうだな…」
ゴウキは安堵の溜め息をつく。
冒険者資格が凍結され、一時はどうなることかと思ったが、どうにか冒険者として身を立てられそうだなとホッとした。
実際には身を立てるどころか冒険者業界で大業を成し遂げる勢いなのだが、当のゴウキはその自覚がまだ無かった。
「もう昼前か…」
ゴウキが部屋から出ると、ギルドはとっくに営業を開始しているようだった。
ちなみにゴウキ・ファミリーは今回の換金が終えるまでダンジョンアタックは中止しているので、特に冒険者らしい活動をしていない。とりあえず今回の清算が終わるまでは新たに金のやり取りが発生するようなことはやめておこうというゴウキの判断からだった。
「あっ…ゴウキさん…」
カウンターにいるノーラがゴウキの姿を見つけると、なんとも微妙な表情を浮かべた。いつもなら「おそようございますゴウキさん!」などと言って満面の笑顔を向けてくるのだが…?と違和感にゴウキは首を傾げる。
しかし原因らしきものはすぐにわかった。
「やっと来ましたか!」
ノーラとカウンター越しに対面していた男が、ゴウキの姿を見つけるなり叫んだ。どうやらゴウキのことを待ちわびていたようである。
「私は、セントラルギルドの者です。ゴウキ様にお伝えせねばならぬことがあります故、探しておりました」
セントラルギルドの職員の服装をしている男を見て、ゴウキは怪訝な顔をする。セントラルが今更何の用だと疑問が沸いていた。
「お喜び下さい。まず第一にゴウキ様の冒険者資格の凍結が解除されました」
「あっそ」
ギルド職員の満面の作り笑いはゴウキの塩対応によってピクッ…と、若干崩れた。
「つきましては、ゴウキ様には当ギルドの専属冒険者として厚待遇で戻ってきて頂きたく…」
「帰りな」
顔をひきつらせながらも、尚も語ろうとするギルド職員の言葉をゴウキは遮る。
「あの…」
「話はそれだけか?なら帰りな」
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「いや、ゴウキさんね…冒険者としてやっていくなら、ウチ以上に良いところはないんですよ?」
馬鹿でもわかるように、とギルド職員は丁寧に説明するが、それでもゴウキは聞く耳を持たない。
「フォースギルドでやっていけそうだから、もし困ったらで頼むわ」
心にもないことを言って、適当な話を終わらせるゴウキに、ギルド職員は怒りに肩を震わせる。
「そうですか…ボスに伝えておきます。いずれどういうことになるかわかるでしょう」
捨て台詞をはいてギルド職員は帰っていった。
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